国家賠償法一条の解釈として公務員個人が賠償責任を負わないものとしても、これによつて被害者たる原告はなんらの不利益を被るものでもないから、同人は右規定が憲法一四条に違反する旨を主張する利益を有しない。
法律の規定によつて特段の不利益を受けない場合と右規定の違憲の主張の許否
憲法14条,国家賠償法1条
判旨
公権力の行使に当たる公務員が職務上故意または過失により違法に損害を与えた場合、国または公共団体が賠償責任を負い、公務員個人は直接の責任を負わない。
問題の所在(論点)
国家賠償法1条1項に基づき国または公共団体が賠償責任を負う場合、当該公務員個人も被害者に対して直接の損害賠償責任を負うか。また、個人責任を否定する解釈は憲法14条に違反するか。
規範
国家賠償法1条1項の規定に基づき、公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、国または公共団体がその被害者に対して賠償責任を負う。この制度は代位責任的な性質を有しており、公務員個人は被害者に対して直接の賠償責任を負わないと解される。
重要事実
上告人は、公務員の職務上の行為によって損害を被ったとして、当該公務員個人に対して損害賠償を請求した。原審は、国家賠償法1条の解釈として公務員個人の責任を否定し、請求を排斥した。これに対し、上告人は当該解釈が法解釈として誤りであり、また憲法14条の平等原則に違反するとして上告した。
あてはめ
国家賠償法1条1項が適用される事案では、公務員個人の行為は国の活動として評価され、国が賠償責任を肩代わりする。上告人が主張する損害が事実であれば、国に対して賠償を求めることが可能であるため、公務員個人への請求を否定しても被害者救済の途が閉ざされるわけではない。したがって、同条の規定を前提とする限り、公務員個人に責任を負わせない解釈は合理的であり、憲法違反を主張する利益も認められない。
結論
公務員個人は直接の賠償責任を負わない。したがって、上告人の請求を排斥した原審の判断は相当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
国賠法1条1項の適用場面における公務員個人の責任を否定したリーディングケース。答案では「国賠法1条の要件を満たす場合、公務員個人は責任を負わない」という規範の根拠として用いる。ただし、軽過失の場合に限定せず、重過失・故意であっても被害者に対する「直接の責任」を否定する点に注意が必要(国から公務員への求償権の問題とは別個の議論である)。
事件番号: 昭和37(オ)248 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員は被害者に対し、その責任を負担しない。