公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員は被害者に対し、その責任を負担しない。
国家賠償と賠償責任の負担者
判旨
公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員個人は被害者に対して直接の賠償責任を負わない。
問題の所在(論点)
国家賠償法1条1項所定の公務員の職務執行に基づく不法行為が成立する場合、当該公務員個人が民法上の不法行為責任を負うか(公務員個人の賠償責任の有無)。
規範
国家賠償法1条1項が適用される公務員の職務執行上の行為により損害が生じた場合、国又は公共団体が賠償責任を負うべきものであり、公務員個人は被害者に対してその責任を負わない(公務員の個人責任の否定)。
重要事実
公務員の職務執行に際して他人に損害を与えた事案において、被害者が当該公務員個人の賠償責任を追及した。原審は、公務員の職務執行に基づく損害については国または公共団体のみが責任を負い、公務員個人は責任を負担しないと判断したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件において、損害は公務員の職務執行に基づいて生じたものである。この場合、国家賠償法が優先的に適用される結果、国または公共団体が排他的に賠償責任を負担することになる。したがって、加害行為を行った公務員個人に対して直接賠償を求めることは法的に認められないと解される。
結論
公務員個人は被害者に対し賠償責任を負わない。原判決の判断は正当であり、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
国賠法1条1項の事案において、公務員の故意・過失の有無にかかわらず、被害者から公務員個人への直接請求を否定する確立した判例である。答案上は、被告適格の検討や個人責任の不成立を論じる際に、この規範を簡潔に引用する。なお、軽過失のみならず重過失・故意の場合であっても、対外的には個人責任を否定するのが通説・実務の立場である。
事件番号: 昭和39(オ)1394 / 裁判年月日: 昭和40年4月1日 / 結論: 棄却
公務員の職務行為による損害については、当該公務員は直接被害者に対して賠償責任を負担しない。