公権力の行使に当る公務員の職務行為に基づく損害については、国又は公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行に当つた公務員は、個人として被害者に対しその責任を負担するものではない(昭和三〇年四月一九日第三小法廷判決、民集九巻五号五三四頁参照)。
国家賠償と賠償責任の負担者
国家賠償法1条,民法709条
判旨
公権力の行使に当たる公務員の職務行為によって損害が生じた場合、国または公共団体が賠償責任を負い、当該公務員個人は直接の賠償責任を負わない。
問題の所在(論点)
国家賠償法1条1項が適用される公務員の職務行為によって損害が発生した場合、当該公務員個人が被害者に対して民法上の不法行為責任を負うか(公務員の個人責任の有無)。
規範
公権力の行使に当たる公務員の職務行為に基づき損害が生じた場合、国または公共団体が賠償の責めに任ずる。これに対し、職務の執行に当たった公務員個人は、被害者に対して直接にその責任を負担するものではないと解するのが相当である。
重要事実
上告人は、裁判官(被上告人)が職務行為により違法に損害を加えたと主張し、裁判官個人に対して損害賠償を求めて提訴した。原審は、公務員個人の賠償責任を否定したため、上告人がこれを不服として上告した事案である。
あてはめ
被上告人である裁判官の行為は「公権力の行使に当たる公務員の職務行為」に該当する。このような職務行為によって仮に違法に損害が生じたとしても、国家賠償制度の趣旨に照らせば、賠償責任を負うのは国または公共団体に限定される。したがって、被上告人個人が賠償の責めに任ずる余地はない。
結論
公務員個人は被害者に対して直接の賠償責任を負わない。したがって、本件裁判官に対する請求を棄却した原審の判断は正当であり、本件上告を棄却する。
実務上の射程
国家賠償法1条1項の事案において、被告適格(公務員個人への請求の可否)を検討する際のリーディングケースである。公務員に故意または重過失がある場合であっても、被害者に対する直接の責任を否定し、国への求償問題(同条2項)に解消されるとするのが実務の確立した運用である。
事件番号: 昭和39(オ)1394 / 裁判年月日: 昭和40年4月1日 / 結論: 棄却
公務員の職務行為による損害については、当該公務員は直接被害者に対して賠償責任を負担しない。