森林組合の組合長理事を兼ねる町長が、専ら森林組合の事務に従事させることを予定して町職員に採用したうえ森林組合に出向させた者に対し、七年余にわたつて町予算から総額七九六万余円の給与を支払つたが、同人は、その間、町長の指揮監督を受けることなく、森林組合の事務所で専ら森林組合の事務に従事し、町の事務を行つたことはないなど、判示の事実関係のもとにおいては、同町長は、右給与を支払うことにより違法に町の公金を支医したものというべきである。
地方自治法二四二条一項にいう違法な公金の支出にあたるとされた事例
地方自治法204条の2,地方自治法242条1項,地方自治法242条の2第1項
判旨
町長が森林組合に対する財政的援助等を目的として、形式的に町職員として採用した者を専ら森林組合の事務に従事させ、町予算から給与を支払う行為は、法令又は条例の根拠に基づかない違法な公金の支出にあたる。また、当該支出により町が本来負担すべき事務費用を免れたとしても、直接の因果関係がない限り損益相殺は認められない。
問題の所在(論点)
町職員を民間団体(森林組合)に専従させ、町がその給与を負担する行為が、適法な公金の支出といえるか。また、当該団体が町の行政事務を代行していた場合に損益相殺が認められるか。
規範
1. 地方公共団体の長が、職員を法令等に基づかずに民間団体等へ派遣し、当該団体専従の事務に従事させながら公費から給与を支給する行為は、公金の支出に関する法理に照らし、正当な理由のない違法な公金支出となる。 2. 公金の違法支出による損害賠償責任において、当該支出が町に何らかの利益(代行事務による費用節減等)をもたらしたとしても、その利益と支出との間に直接の因果関係が認められない限り、損益相殺の法理を適用して賠償額を減じることはできない。
重要事実
町長である上告人は、森林組合の職員を確保するため、町職員採用を希望していたEに対し、一応町職員として採用した上で直ちに森林組合へ出向を命じた。Eは約7年半の間、町職員の身分を有しながら町長の指揮監督を受けず、専ら森林組合の事務所でその事務を統轄し、町の事務には一切従事していなかった。上告人はこの間、町予算の職員給与から計約796万円をEに支払った。
あてはめ
1. 森林組合は行政組織の一部ではなく森林所有者の組織にすぎない。法令・条例の根拠なく、町職員を町長の指揮監督から離して専ら組合事務に従事させ、その給与を町が負担することは、実質的に組合への違法な財政援助を目的とするものであり、違法な公金支出といえる。 2. 仮に組合事務の一部に町本来の行政事務が含まれていたとしても、それは委託等により組合の事務となったものにすぎない。また、町が費用支出を免れる利益を得たとしても、それは給与支払と直接の因果関係がなく、損益相殺の対象とはならない。
結論
本件給与の支払は違法な公金の支出にあたり、上告人は町に対して損害賠償義務を負う。損益相殺による賠償額の減額も認められない。
実務上の射程
地方自治法上の住民訴訟(4号請求)等における「公金の支出の違法性」を論じる際に活用できる。特に、人事派遣を通じた迂回的な財政援助の違法性と、損益相殺における「直接の因果関係」の要否を示す重要な規範となる。
事件番号: 平成6(オ)952 / 裁判年月日: 平成7年11月7日 / 結論: 棄却
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