市の近郊に居住する者が会員となって組織されている民間団体の開催する総会に招待を受けた市長に代わって,市の助役が上記総会とそれに引き続き開催された飲食を伴う懇親会に出席した際に,祝儀として市長交際費から1万円が支出された場合において,市における市長交際費の支出基準によれば招待等で会費の明示のないときは会費相当額を支出することができるとされていたこと,上記懇親会に出席した会員が支払った懇親会費は5000円であったが懇親会費用の不足分には同団体の年会費から拠出された金員も充てられていたこと,同団体は無償で市の管理する墓地の草刈りをしており市長交際費の支出が同団体による労働奉仕に謝意を示す性質をも有していたことがうかがい得ることなど判示の事情の下においては,上記懇親会の会費相当額が5000円を幾ら超過するかを具体的に確定することなく,また,市長交際費の支出の理由に関する上記のような事情の有無を確定することなく,社会通念上相当と認められる会費相当額は5000円であるとしてそれを超える部分の支出が違法であるとした原審の判断には,違法がある。
市の助役が民間団体の開催する会合に出席した際に祝儀として市長交際費から支出された金員が会費相当額として社会通念上相当と認められる範囲を超えるものとした原審の判断に違法があるとされた事例
地方自治法232条1項,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
判旨
市長交際費からの支出が社会通念上相当な範囲を逸脱し違法であるか否かは、単に懇親会費の額のみならず、支出の目的、団体の活動実態、及び労働奉仕に対する謝意といった諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきである。
問題の所在(論点)
市長交際費から支出された祝儀が、懇親会の会費名目額(5,000円)を超えている場合に、直ちに社会通念上の相当性を欠き違法(地方自治法242条の2第1項4号)となるか。
規範
地方自治法に基づく市長交際費の支出が違法となるかは、その支出が「社会通念上相当と認められる範囲」を逸脱しているか否かによって判断される。具体的には、支出の性質が単なる会費にとどまるのか、あるいは団体の活動(労働奉仕等)に対する謝意を含むものか等の支出の目的・理由を、具体的諸事情に照らして検討しなければならない。
重要事実
篠山市長(被告)は、旧海軍従事者の団体(会員41名)の総会・懇親会に助役を代理出席させ、市長交際費から祝儀として1万円を支出した。当該団体は、市管理の墓地の草刈り奉仕を毎年実施していた。懇親会費は会員1人あたり5千円であったが、不足分は団体の年会費から補填されていた。原審は、会費相当額の5千円を超える部分は社会通念上の相当性を欠き違法であると判断した。
あてはめ
まず、懇親会の実費(会費相当額)は、会員の支払額(5千円)に年会費からの補填分を加えた額であり、1人あたり5千円を超えていた。次に、本件団体は市管理墓地の無償清掃を行っており、支出にはこの労働奉仕への謝意が含まれていた可能性がある。原審はこれらの事情を具体的に確定・検討することなく、会員の支払額との差額のみをもって直ちに違法と断じており、審理不尽の違法がある。
結論
本件支出が社会通念上相当な範囲を逸脱するか否かは、会費としての性質に加え、労働奉仕への謝意等の事情を検討して判断すべきであり、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
裁量処分である公金支出(交際費)の違法性判断において、「社会通念上の相当性」の枠組みを維持しつつ、単純な金額比較ではなく、相手方団体の公益的活動への謝意といった実質的な支出理由を考慮すべきことを示した。また、補足意見は、補助職員の専決処分における長の損害賠償責任につき、長自身の指揮監督義務違反(故意・過失)を要件とする従来の準則を再確認しており、住民訴訟の被告適格や主張責任の検討に際して参照される。
事件番号: 平成15(行ヒ)74 / 裁判年月日: 平成18年12月1日 / 結論: 棄却
1 資金前渡を受けた職員のする普通地方公共団体に債務を負担させる行為及び債権者に対する支払は,住民訴訟の対象となる「公金の支出」に当たる。 2 資金前渡を受けた職員は,その権限に基づいてした普通地方公共団体に債務を負担させる行為及び債権者に対する支払の適否が問題とされている住民訴訟において,地方自治法(平成14年法律第…