数社を介在させて順次発注された工事の最終の受注者XとXに対する発注者Yとの間におけるYが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う旨の合意は,上記工事が一部事務組合から発注された公共事業に係るものであって,同組合からの請負代金の支払は確実であったなど判示の事情の下においては,Xに対する請負代金の支払につき,Yが請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず,Yが上記支払を受けた時点又はその見込みがなくなった時点で支払期限が到来する旨を定めたものと解すべきである。
数社を介在させて順次発注された工事の最終の受注者XとXに対する発注者Yとの間におけるYが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う旨の合意が,Xに対する請負代金の支払につき,Yが請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず,Yが上記支払を受けた時点又はその見込みがなくなった時点で支払期限が到来する旨を定めたものと解された事例
民法127条1項,民法135条1項,民法632条
判旨
請負契約における「入金リンク条項」は、注文者の代金受領を停止条件とするものではなく、代金支払債務の「履行期限」を定めたものと解すべきである。したがって、注文者が代金を受領した場合のみならず、その受領の見込みがなくなった時点でも支払期限は到来する。
問題の所在(論点)
請負代金の支払を注文者の入金時とする旨の特約(入金リンク条項)が、代金支払義務の発生を制限する「停止条件」か、あるいは単なる「支払期限」の猶予(不確定期限)かが問題となる。
規範
有償双務契約の性質上、下請負人が仕事を完成させたにもかかわらず、元請負人が代金を受領できない場合に自己も支払を受けられないという合意をすることは通常想定し難い。したがって、特定の入金があった後に支払う旨の条項は、不確定期限を定めたものと解し、①当該支払を受けた時、または②当該支払を受ける見込みがなくなった時に期限が到来すると解するのが当事者の合理的合意に合致する。
重要事実
上告人(下請)は、被上告人(元請)から浄水場の監視設備製造等を請け負い(代金3.15億円)、仕事を完成させ納品した。本件契約には「入金リンクとする(発注者から代金支払を受けた後に支払う)」旨の条項があった。その後、発注者の連鎖的な倒産(介在したCの破産)により、被上告人は代金を受領できなくなった。被上告人は、同条項は代金支払の「停止条件」であり、条件が不成就である以上、支払義務はないと主張した。
あてはめ
本件請負契約は3億1500万円と高額な有償双務契約であり、公共事業に関連し代金回収の確実性が予定されていた。このような状況下で、上告人が「自らが義務を履行したにもかかわらず、被上告人が支払を受けられない場合に自己も代金を受領できなくなること」まで承諾していたとは到底解し難い。被上告人の主観的な認識にかかわらず、当事者の意思を合理的に解釈すれば、代金受領時を期限としつつ、受領の見込みがなくなった場合(Cの破産等)にも期限が到来するものと解するのが相当である。
結論
本件条項は停止条件ではなく不確定期限を定めたものである。被上告人が支払を受ける見込みがなくなった時点で、本件代金債務の支払期限は到来したと解されるため、被上告人は支払義務を免れない。
実務上の射程
実務上、請負や売買の連鎖におけるリスク分配条項の解釈指針となる。本判決は、特約を「条件」と解すと債権者に酷な結果(履行しても1円も得られないリスク)を強いるため、原則として「不確定期限(支払猶予)」と解すべきことを示した。答案上は、当事者の意思解釈の枠組みとして「有償双務契約の性質」や「対価関係」を根拠に、期限の到来(事実上の不成就確定時)を論じる際に用いる。
事件番号: 平成21(受)309 / 裁判年月日: 平成22年7月20日 / 結論: 破棄差戻
請負人の製造した目的物が,注文者から別会社を介してユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して請負契約が締結され,目的物がユーザーに引き渡された場合において,注文者が請負人に交付した注文書に「支払いについて,ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払いといたします。手形は,リース会社からの廻し手形と…