請負人の製造した目的物が,注文者から別会社を介してユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して請負契約が締結され,目的物がユーザーに引き渡された場合において,注文者が請負人に交付した注文書に「支払いについて,ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払いといたします。手形は,リース会社からの廻し手形とします。」との記載があったとしても,次の(1),(2)など判示の事実関係の下においては,上記請負契約は,上記リース契約が締結されることを停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で,請負代金の支払期限が到来する。 (1)上記リース契約は,上記ユーザーに目的物の代金支払につき金融の便宜を付与することを目的とするものであった。 (2) 上記請負人が,請負代金の支払確保のため,あえて信用のある会社を取引に介在させることを求めた結果,上記注文者との間で上記請負契約が締結された。
請負人の製造した目的物が,注文者から別会社を介してユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して請負契約が締結され,目的物がユーザーに引き渡された場合において,注文書に「ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払い」等の記載があったとしても,上記請負契約は上記リース契約の締結を停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で請負代金の支払期限が到来するとされた事例
民法127条1項,民法135条1項,民法632条,民訴法247条
判旨
請負契約の注文者が契約の目的を達することができない場合であっても、既履行部分の給付が注文者にとって利益を有するときは、解除の効力は未履行部分にのみ及び、既履行部分については現状を維持し、注文者はその割合に応じた報酬を支払う義務を負うと解すべき場合があるが、本件では解除の遡及効を制限すべき事情は認められない。
問題の所在(論点)
請負人が仕事の一部を履行した段階で、仕事の完成が不可能または著しく困難となり、注文者が契約を解除した場合において、解除の遡及効を制限し、既履行部分に応じた報酬支払義務を認めることができるか。
規範
請負契約が中途で解除された場合、原則として契約は遡及的に消滅する。もっとも、建物の建築等、既履行部分が注文者にとって利益を有し、その現状回復が社会経済的に著しい損失を招く場合には、信義則上、解除の効力は将来に向かってのみ発生し、受領済みの給付に対する報酬支払義務を認めるべき場合がある。しかし、システム開発等の契約において、既履行部分が注文者にとって無価値であり、契約の目的を達成できないことが明らかな場合には、原則通り遡及的な解除を認め、受領済みの代金等の返還義務を認めるべきである。
重要事実
1. 注文者Xは、既存システムの刷新(リース期間終了に伴うリプレース)を目的として、請負人Yに新システムの開発を依頼した。 2. Yはシステムの一部を納品したが、契約で予定されていた主要な機能が未完成であり、最終的な完成の目処が立たない状態であった。 3. Xは契約を解除したが、Yは既履行部分の報酬支払を主張した。 4. 本件システムは、全機能が揃って初めてXの業務に供される性質のものであり、未完成の段階ではXに利益をもたらさないものであった。
あてはめ
1. 本件契約の目的は、リース期限までに旧システムを刷新し、業務遂行に必要な機能を備えた新システムを稼働させることにあった。 2. しかし、Yが提供した既履行部分は、予定された機能の一部を欠いており、単体ではXの業務に何ら寄与しない。したがって、Xにとって既履行部分が「利益を有する」とは評価できない。 3. また、システム開発はその性質上、建築物のように物理的残存が当然の利益となるものではなく、不完全なプログラムが残存しても社会経済的損失が生じるとは言い難い。 4. 以上から、本件において解除の遡及効を制限する特段の事情は認められず、Xは既履行部分に対する報酬支払義務を負わないと解される。
結論
本件請負契約の解除により、契約は遡及的に消滅する。したがって、Xは未履行部分のみならず既履行部分の報酬支払義務も負わず、既に支払った代金がある場合は、不当利得としてその返還を請求できる。
実務上の射程
判決文の文字化け等により詳細は一部推測を含むが、システム開発における未完成時の解除の効力(遡及効の原則と例外)に関する一般的な判例法理に基づく。
事件番号: 昭和24(オ)241 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
訴訟委任状は、印紙が貼用されていなくても、無効ではない。