建物等の工事未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に請負契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、かつ、当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情のない限り、右部分についての契約を解除することはできない。
工事未完成の間における既施工部分についての請負契約解除の可否
民法541条,民法632条
判旨
工作物の新築工事請負契約において、工事が可分であり注文者が既施工部分に利益を有する場合、債務不履行を理由とする解除は未施工部分に限られ、既施工部分の報酬債権は消滅しない。
問題の所在(論点)
工作物の建築請負契約において、工事が中途で放棄され債務不履行となった場合、注文者の解除権の行使(民法541条等)により既施工部分の報酬債権も消滅するか。一部解除にとどまるか。
規範
建物その他土地の工作物の工事請負契約につき、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合、①工事内容が可分であり、かつ、②当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のない限り、既施工部分について契約を解除することはできず、未施工部分についてのみ契約の一部解除ができるにとどまる。
重要事実
請負人Dは、注文者である被上告人と建売住宅の新築工事請負契約を締結した。上告人はDに対する手形金債権を保全するため、本件工事代金債権のうち48万7000円につき仮差押決定を受け、その後差押・取立命令を得た。しかし、Dは工事を途中で放棄し、工事完成が困難となったため、被上告人はDに対し契約解除の意思表示をした。当時、工事の出来高は49.4%であり、被上告人は既施工部分を引き取って工事を続行し完成させていた。
あてはめ
本件工事は、出来高が約半数に達しており、工事内容において可分である(①充足)。また、注文者である被上告人は既施工部分を引き取って残工事を続行し建物を完成させていることから、既施工部分の給付について利益を有していたといえる(②充足)。したがって、特段の事情がない限り、本件解除の効力は未施工部分に限られ、既に発生している48万7000円の工事代金債権(既施工部分の報酬)は解除によって当然には消滅しない。
結論
本件解除は未施工部分についてのみ効力を生じ、既施工部分の工事代金債権は存続するため、これを取り立てようとする上告人の請求は認められうる。原審の判断には解除に関する法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
工作物の請負において、遡及効を制限し現状回復を不要とする実務上の要請を明文化した判例である。答案上は、請負の中途解除に伴う報酬支払義務の存否が争点となる場面で、可分性と注文者の利益を認定した上で一部解除にとどまる旨を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和37(オ)1190 / 裁判年月日: 昭和38年4月19日 / 結論: 棄却
(昭和三六年六月一六日第二小法廷判決、民集一五巻六号一五八四頁と同旨)
事件番号: 昭和59(オ)543 / 裁判年月日: 昭和60年5月17日 / 結論: その他
請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。