法人であるYから定年規程所定の65歳の定年により職を解く旨の辞令を受けた職員であるXが,Yとの間でXの定年を80歳とする旨の合意があったと主張して,Yに対し雇用契約上の地位確認及び賃金等の支払を求める訴訟において,次の(1),(2)のような訴訟の経過の下では,控訴審が,X,Yともに主張していない法律構成である信義則違反の点についてXに主張するか否かを明らかにするよう促すとともにYに十分な反論及び反証の機会を与える措置をとることなく,Yは定年退職の告知の時から1年を経過するまでは賃金支払義務との関係では信義則上定年規程による定年退職の効果を主張することができないと判断したことには,釈明権の行使を怠った違法がある。 (1) 第1審は,弁論準備手続期日において本件の争点が上記合意の存否である旨を確認し,口頭弁論期日におけるその結果の陳述を経た上,X本人尋問及び証人尋問を行い,上記合意があったとは認められないとしてXの請求を棄却する旨の判決をした。 (2) 控訴審は,第1回口頭弁論期日において口頭弁論を終結したところ,同期日において陳述された控訴理由もそれに対する答弁も,専ら上記合意の存否に関するものであった。
法人であるYから定年により職を解く旨の辞令を受けた職員であるXがYに対し雇用契約上の地位確認及び賃金等の支払を求める訴訟において,控訴審が,X,Yともに主張していない法律構成である信義則違反の点についてXに主張するか否かを明らかにするよう促すとともにYに十分な反論及び反証の機会を与える措置をとることなく,Yは定年退職の告知の時から1年を経過するまでは賃金支払義務との関係では信義則上定年退職の効果を主張することができないと判断したことに釈明権の行使を怠った違法があるとされた事例
民訴法149条,民法1条2項
判旨
裁判所が当事者の主張していない信義則等の法理を適用して結論を導く場合、不意打ち防止の観点から、釈明権を行使して当事者に意見表明の機会を与えなければならない。
問題の所在(論点)
裁判所が、当事者が主張していない法解釈や法理(本件では信義則)を判決の基礎とするにあたり、釈明権を行使して当事者に反論の機会を与える義務を負うか(釈明義務の範囲)。
規範
裁判所が、当事者の現に述べていない法理(信義則等)を適用して請求の当否を判断しようとする場合には、あらかじめ釈明権を行使して、当事者に対し当該点について主張立証をする機会を与えるべきである。これを行わず、予期しない法理の適用によって敗訴させることは、釈明権の行使を怠った違法があり、審理不尽の結果として判決に影響を及ぼす法律の違反となる。
事件番号: 昭和62(行ツ)119 / 裁判年月日: 平成元年1月17日 / 結論: 棄却
地方公務員法二八条四項、一六条二号は、憲法一三条、一四条一項に違反しない。
重要事実
学校法人に勤務していた職員(被上告人)が、定年後も勤務の継続を期待して寄附等を行ったにもかかわらず、学校側が定年を理由に退職させた事案。原審は、学校側が定年後1年間は退職を主張しないとの合意があった等と認定した上、信義則を適用して、定年後1年が経過するまでは退職に伴う退職金等の受領を拒絶できる(または退職の効力を争える)旨の判断を示した。しかし、原審において「信義則違反」の点は当事者から明示的に主張されていなかった。
あてはめ
本件では、上告人が信義則違反の点について自ら主張しておらず、原審も第1回口頭弁論で審理を終結させていた。原審が依拠した「定年後1年を経過するまでは退職を主張できない」という判断は、当事者にとって予測困難な法理の適用である。したがって、裁判所は釈明権を行使して、上告人に対し信義則の適否について主張し、証拠を提出する機会を与えるべきであったといえる。これを行わずに直ちに判断を下したことは、審理不尽の違法を免れない。
結論
釈明権の行使を怠った原審判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるため、破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
当事者の主張が法律的に構成不十分な場合だけでなく、裁判所が独自の法的観点(信義則や権利濫用など)から判断しようとする際の「不意打ち防止」の根拠として機能する。民事訴訟法149条の釈明義務の限界を示す重要判例である。
事件番号: 昭和43(オ)932 / 裁判年月日: 昭和48年12月12日 / 結論: 破棄差戻
一、憲法一四条や一九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。 二、企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。 三、労働基準法三条は、労働者の雇入れそのものを制約する規定ではない。 四、労働者を雇い入れようとする企業者が、その…
事件番号: 昭和62(オ)515 / 裁判年月日: 平成元年12月21日 / 結論: 棄却
ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法九〇条により無効である。