1 普通地方公共団体の臨時的任用職員に対する手当の支給が地方自治法204条2項に基づく手当の支給として適法であるというためには,当該臨時的任用職員の勤務に要する時間に照らして,その勤務が通常の勤務形態の正規職員に準ずるものとして常勤と評価できる程度のものであることが必要であり,かつ,支給される当該手当の性質からみて,当該臨時的任用職員の職務の内容及びその勤務を継続する期間等の諸事情にかんがみ,その支給の決定が合理的な裁量の範囲内であるといえることを要する。 2 市の臨時的任用職員に対する期末手当に該当する一時金の支給は,当該一時金が週3日の勤務をした臨時的任用職員に支給され,その程度の勤務では当該市における通常の勤務形態の正規職員の勤務時間の6割に満たないなど判示の事情の下では,地方自治法204条2項の要件を満たさない。 3 普通地方公共団体の臨時的任用職員の給与については,当該職員が従事する職が当該普通地方公共団体の常設的な事務に係るものである場合には,その職に応じた給与の額等又はその上限等の基本的事項が条例において定められるべきであり,当該職員が従事する職が臨時に生じた事務に係るものである場合には,少なくとも,その職に従事すべく任用される職員の給与の額等を定めるに当たって依拠すべき一般的基準等の基本的事項が可能な限り条例において定められるべきである。 4 市の臨時的任用職員に対する期末手当に該当する一時金の支給は,当該支給を受けた多数の臨時的任用職員の多くが当該市の常設的な事務に係る職に従事していたことがうかがわれるにもかかわらず,当該一時金の額及び支給方法又はそれらに係る基本的事項について条例に定めがなかったなど判示の事情の下で は,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条5項,地方自治法204条3項に違反する。 5 市が地方自治法204条2項に規定する同条1項の常勤の職員に該当しない臨時的任用職員に対し期末手当に該当する一時金を支給した場合において,手当の支給が問題となる場面における常勤の職員と非常勤の職員との区別の基準を直接に読み取ることができる法令の具体的な定めが存せず,上記支給の当時上記基準を明らかにした行政実例又は裁判例があったとはうかがわれないなど判 示の事情の下では,市長が補助職員の専決による上記支給を阻止しなかったことに過失があるとはいえない。 6 市が地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条5項,地方自治法204条3項に違反して臨時的任用職員に対し期末手当に該当する一時金を支給した場合において,国家公務員に関しては,正規職員との対比において臨時的任用職員と同様の側面も有する非常勤の職員の給与について各庁の長が常勤の職員の給与との権衡を考慮し予算の範囲内で給与を支給するものと法律で定められていること,普通地方公共団体の臨時的任用職員の給与を任命権者が別に定める旨を条例中に規定することを許容する趣旨と解する余地もないとはいえない行政実例があること,当該市を包括する府及びその区域内の多数の市で条例に臨時的任用職員の給与について何らの規定も置いていなかったことなど判示の事情の下では,市長が補助職員の専決による上記支給を阻止しなかったことに過失があるとはいえない。 (1〜6につき補足意見がある。)
1 普通地方公共団体の臨時的任用職員に対する手当の支給が地方自治法204条2項に基づく手当の支給として適法といえるための要件 2 市の臨時的任用職員に対する期末手当に該当する一時金の支給が地方自治法204条2項の要件を満たさないとされた事例 3 普通地方公共団体の臨時的任用職員の給与について条例において定められるべき事項 4 市の臨時的任用職員に対する期末手当に該当する一時金の支給が地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条5項,地方自治法204条3項に違反するとされた事例 5 市が地方自治法204条2項に規定する同条1項の常勤の職員に該当しない臨時的任用職員に対し期末手当に該当する一時金を支給した場合において,市長が補助職員の専決による上記支給を阻止しなかったことに過失があるとはいえないとされた事例 6 市が地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条5項,地方自治法204条3項に違反して臨時的任用職員に対し期末手当に該当する一時金を支給した場合において,市長が補助職員の専決による上記支給を阻止しなかったことに過失があるとはいえないとされた事例
(1〜6につき)地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条1項,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条3項,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条4項,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条5項,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)204条の2,地方自治法204条,地方公務員法22条2項,地方公務員法22条5項 (2につき)人事院規則15−15(平成21年人事院規則15−15−6による改正前のもの)2条 (4につき)一般職の職員の給与に関する条例(昭和32年茨木市条例第49号。平成17年茨木市条例第26号による改正前のもの)36条,一般職の職員の給与に関する条例(昭和32年茨木市条例第49号。平成20年茨木市条例第32号による改正前のもの)36条2項,臨時的任用職員に関する規則(平成17年茨木市規則第40号。平成20年茨木市規則第43号による改正前のもの)13条 (6につき)一般職の職員の給与に関する法律22条2項
判旨
地方自治法上の「常勤の職員」に当たらない臨時的任用職員への期末手当支給は違法であり、また給与の基本事項を条例で定めない支給も同法に違反するが、当時の実務状況に照らせば市長に過失があるとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 週3日勤務の臨時的任用職員への期末手当支給は地方自治法204条2項に適合するか。 2. 給与の額・支給方法を条例で定めない支出の適法性。 3. 違法な支出につき、当時の市長に善管注意義務違反(過失)が認められるか。
規範
1. 臨時的任用職員への手当支給が地方自治法204条2項に基づき適法となるには、勤務時間が正規職員に準じ常勤と評価できる程度であることを要する。 2. 憲法上の条例主義及び地方自治法203条5項・204条3項の趣旨(民主的統制)に基づき、職員の給与の額・支給方法等の基本事項は条例で定めなければならず、これらを白紙的に規則等へ委任することは許されない。
重要事実
茨木市長は、週3日以上勤務する臨時的任用職員に対し、条例に定めのないまま「本件一時金(期末手当)」を支給した。当時の旧条例には臨時職員の給与規定がなく、内規に基づき市長決裁で支給額が決定されていた。また、対象職員の勤務時間は正規職員の6割弱であった。後に条例が改正され、遡及適用の規定が設けられたが、依然として具体的な額や支給方法は規則に委任されていた。
あてはめ
1. 週3日勤務は正規職員の4分の3にも満たず、「常勤」と評価できないため、同法204条2項の要件を欠き違法である。 2. 多数の臨時職員が常設的事務に従事している実態がありながら、給与の基本事項を条例に定めず、新条例でも規則に丸投げしている点は、給与条例主義に反し違法である。 3. もっとも、当時は常勤・非常勤の区別を明確にする法令・判例がなく、他自治体でも同様の運用が広く行われていた。昭和36年の行政実例も禁止を明示していなかったため、市長が違法性を容易に知り得たとはいえず、指揮監督上の過失は否定される。
結論
本件一時金の支出は地方自治法に違反し不当であるが、当時の市長に損害賠償責任を負わせるべき過失は認められない。
実務上の射程
給与条例主義の厳格な要請を確認した重要判例である。答案上、臨時職員への手当支給の適法性を論じる際の規範として機能する。また、本判決以降は違法性の認識が容易になったと解されるため、現在同種の事案が発生した場合には、首長の過失が肯定される可能性が高い点に注意を要する(千葉補足意見参照)。
事件番号: 平成6(行ツ)234 / 裁判年月日: 平成10年4月24日 / 結論: 破棄差戻
市がその商工業の進展を図るために職員を地元の商工会議所に専務理事として派遣して派遣期間中の給与を支給した場合において、商工会議所の実際の業務内容、右業務内容と市の商工業の振興策との関連性、派遣職員の商工会議所における具体的な職務内容、右職務内容と右振興策との関係等について具体的な認定をした上、右行政目的の達成のために当…
事件番号: 平成22(行ヒ)102 / 裁判年月日: 平成24年4月20日 / 結論: 破棄自判
1 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,市長に過失があるとはいえない。 (1) 同法は,地方公共団体が上記団体に支出した補助…