北海道開発庁長官が,下部組織である北海道開発局の港湾部長に対し,競争入札が予定される港湾工事の受注に関し特定業者の便宜を図るように働き掛ける行為は,同長官に港湾工事の実施に関する指揮監督権限がなく,また,その行為が談合にかかわる違法なものであるとしても,港湾工事に係る予算の実施計画作製という同長官の職務に密接な関係があり,賄賂罪における職務関連性が認められる。 (補足意見がある。)
北海道開発庁長官が,下部組織である北海道開発局の港湾部長に対し,競争入札が予定される港湾工事の受注に関し特定業者の便宜を図るように働き掛ける行為について,賄賂罪における職務関連性が認められた事例
刑法(平成15年法律第138号による改正前のもの)197条1項,国家行政組織法(平成11年法律第90号による改正前のもの)10条,北海道開発法(平成11年法律第102号による改正前のもの)5条1項,北海道開発法(平成11年法律第102号による改正前のもの)9条,北海道開発法(平成11年法律第102号による改正前のもの)10条1項1号,北海道開発法(平成11年法律第102号による改正前のもの)10条2項,北海道開発法(平成11年法律第102号による改正前のもの)12条1項,財政法(平成11年法律第160号による改正前のもの)34条の2第1項
判旨
公務員が、自己の職務権限を背景に他の公務員へ働き掛ける行為は、それが本来の職務の公正および社会の信頼を損なうものであれば「職務に密接な関係のある行為」に該当する。また、働き掛けを受ける公務員の職務権限は構成要件そのものではなく、働き掛けの内容が当該公務員の職務と密接な関係にあれば足り、その行為が違法な談合であっても職務関連性は否定されない。
問題の所在(論点)
1. 直接の指揮監督権限がない他部署の事務への働き掛けが「職務に密接な関係のある行為」といえるか。 2. 働き掛けの対象が「談合」という違法な行為である場合に、職務関連性が否定されるか。 3. 働き掛けを受ける側の公務員(港湾部長)の職務権限を厳格に認定する必要があるか。
規範
刑法197条1項後段の「職務に関し」には、公務員の職務そのものだけでなく、これに密接な関係のある行為も含まれる。密接関係性は、本来の職務との関係から客観的に判断されるべきであり、働き掛けの対象となる行為が違法なものであっても直ちに左右されない。また、他の公務員への働き掛けを請託された場合、働き掛けを受ける側の公務員に厳格な職務権限が認められる必要はなく、働き掛け事項がその職務と密接な関係にあれば足りる。
重要事実
北海道開発庁長官であった被告人は、工事業者から、北海道開発局が発注予定の港湾工事を自社が受注できるよう便宜を図ってほしいとの請託を受けた。被告人は、予算実施計画の作製事務を統括する権限に基づき、港湾部長を呼び出して特定の業者を落札させるよう働き掛け、報酬として現金600万円を受領した。なお、長官には港湾工事の実施に関する直接の指揮監督権限はなく、また港湾部長による業者指名は談合を前提とした違法な慣行であった。
あてはめ
被告人は予算実施計画作製の統括権限を有しており、これを背景に職員を指導する形で働き掛けを行っている。この働き掛けは、予算実施計画の公正および社会の信頼を損なうものであるから、本来の職務に密接に関係する。また、談合という違法な行為への介入であっても、職務の公正に対する信頼を害する点に変わりはなく、密接関係性は否定されない。さらに、港湾部長は慣行として業者指名を行っており、働き掛け事項と部長の職務には密接な関係が認められるため、被告人の職務関連性を認定する上で十分である。
結論
被告人の行為は「職務に関し」賄賂を収受したものと認められ、受託収賄罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「鈴木宗男事件」に関するものであり、ロッキード事件判決(最判平7・2・22)が示した内閣総理大臣の広範な職務権限の議論と、一般的な各省庁の長等の職務権限を区別した点に実務上の意義がある。答案上は、職務密接関係性を論じる際、本来の職務の公正に対する信頼を害するかという観点から、権限の有無を柔軟に判断する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和62(あ)1351 / 裁判年月日: 平成7年2月22日 / 結論: 棄却
一 刑訴法はいわゆる刑事免責の制度を採用しておらず、刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書を事実認定の証拠とすることは許容されない。 二 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることは、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示として、賄賂罪の職務行為に当た…