一 北海道総合開発計画に含まれるスポーツ施設の建設予定場所等に関する情報の提供を市等に求めること、第三セクター方式で行われる同施設の建設事業主体として特定企業を市等に紹介すること及び同施設建設工事の施工業者として特定企業を市等に紹介し、あっ旋することは、北海道開発庁長官の職務権限に属する。 二 北海道東北開発公庫(平成一一年法律第七三号による解散前のもの)に対し特定企業への融資を紹介し、あっ旋することは、北海道開発庁長官の職務権限に属する。
一 北海道総合開発計画に含まれるスポーツ施設の建設に関する情報の提供を市等に求めること及び同施設の建設事業主体等として特定企業を市等に紹介しあっ旋することと北海道開発庁長官の職務権限 二 北海道東北開発公庫(平成一一年法律第七三号による解散前のもの)に対し特定企業への融資を紹介しあっ旋することと北海道開発庁長官の職務権限
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条1項,国家行政組織法10条,北海道開発法5条1項1号,北海道開発法(平成11年法律第73号による改正前のもの)5条1項2号,北海道東北開発公庫法(平成11年法律第73号による廃止前のもの)20条,北海道東北開発公庫法(平成11年法律第73号による廃止前のもの)23条,北海道東北開発公庫法(平成11年法律第73号による廃止前のもの)33条,北海道東北開発公庫法(平成11年法律第73号による廃止前のもの)35条1項,北海道東北開発公庫法(平成11年法律第73号による廃止前のもの)36条
判旨
賄賂罪における職務権限は、法令上の事務分配規定に基づく職務のみならず、これと密接な関係にある事務や、実質的な影響力を及ぼし得る行政指導の範囲にまで及ぶ。北海道開発庁長官が、開発計画の調整・推進や北東公庫への監督権限に基づき、特定企業の紹介や融資のあっせんを行うことは職務権限に含まれる。
問題の所在(論点)
閣僚(北海道開発庁長官)による、自治体に対する特定業者の紹介・あっせん行為や、監督下にある公庫に対する個別融資の紹介・あっせん行為が、刑法上の「職務」に含まれるか。
規範
賄賂罪(刑法197条1項前段)の「職務」とは、公務員がその地位に伴い法令上担当すべきものとされる事務(本来の職務)のみならず、それと密接な関係にある事務、さらには法令上の根拠に基づく直接的な決定権限がなくとも、その地位に基づいて実質的に行い得る行政指導(指導、勧告、助言、紹介、あっせん等)も含まれる。
重要事実
北海道開発庁長官であった被告人が、特定会社(A社)の役員から、①開発計画に含まれるスポーツ施設の建設予定地等の情報提供および、事業主体や施工業者としてA社やその取引先を札幌市等に紹介・あっせんすること、②A社がリゾート開発で北海道東北開発公庫(北東公庫)から融資を受ける際に便宜を図るよう同公庫に働き掛けること、以上の請託を受けて賄賂を収受した。
あてはめ
①について、北海道開発庁長官は北海道開発法に基づき開発計画の実施に関する事務を調整・推進する権限を有し、その目的達成のために札幌市等へ指導・助言を行うことができる。したがって、特定業者の紹介・あっせんも一般的職務権限に属する。②について、長官は北東公庫の業務方法書等の認可権や監督権を専決処理する立場にあり、合理的な行政目的がある場合には、行政指導として融資の紹介・あっせんを行うことも可能である。よって、個別融資への働き掛けも一般的職務権限に属すると評価される。
結論
被告人が行った各行為は、いずれも北海道開発庁長官の職務権限に属する。したがって、当該行為に関して賄賂を収受したことは収賄罪を構成する。
実務上の射程
閣僚等の政治家公務員における「職務権限」を広く捉えるリーディングケース。抽象的な権限(調整、推進、監督等)があれば、それに付随する事実上のあっせん行為や行政指導も職務密接関連性や実質的影響力に基づき収賄罪の対象となる。答案では、法令上の根拠条文から一般的権限を導いた上で、当該あっせん行為が行政目的達成の手段として合理的範囲内にあるかを論じる際の指針とする。
事件番号: 平成20(あ)738 / 裁判年月日: 平成22年9月7日 / 結論: 棄却
北海道開発庁長官が,下部組織である北海道開発局の港湾部長に対し,競争入札が予定される港湾工事の受注に関し特定業者の便宜を図るように働き掛ける行為は,同長官に港湾工事の実施に関する指揮監督権限がなく,また,その行為が談合にかかわる違法なものであるとしても,港湾工事に係る予算の実施計画作製という同長官の職務に密接な関係があ…