国の行政機関が国家公務員の採用に関し民間企業における就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力することは、内閣官房長官の職務権限に属する。
国の行政機関が国家公務員の採用に関し民間企業における就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力することと内閣官房長官の職務権限
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条1項,内閣法12条2項,内閣法13条3項
判旨
内閣官房長官が、国の行政機関全体にわたる国家公務員の採用に関する総合調整等について請託を受け賄賂を収受した場合、当該事項は内閣官房長官の職務権限に属し、受託収賄罪が成立する。
問題の所在(論点)
内閣官房長官が、国家公務員の採用という国の行政機関全体にわたる事項に関し、行政各部の施策の統一保持を目的とした働きかけを求められた場合、それが受託収賄罪における「職務」の範囲に含まれるか。
規範
刑法197条1項後段の「職務」に関し、内閣官房長官の職務権限は、内閣法に基づく内閣官房の所掌事務である「閣議に係る重要事項に関する総合調整その他行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整に関する事務」の統轄(内閣法12条2項、13条3項)に及ぶ。したがって、国の行政機関全体にわたる事項について適切な措置を求める請託は、内閣官房長官の職務権限に属すると解すべきである。
重要事実
被告人は内閣官房長官の職にあり、株式会社リクルートの代表取締役等から、国の行政機関が国家公務員の採用に関し、民間企業における就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力されたいとの請託を受け、その報酬として賄賂を収受した。弁護側は、当該事項が内閣官房長官の職務権限に属さないとして受託収賄罪の成立を争った。
あてはめ
本件で請託された内容は、国家公務員の採用という国の行政機関全体にわたる事項について適切な措置を採ることを求めるものである。内閣法12条2項および13条3項によれば、内閣官房長官は行政各部の施策に関する統一保持上の総合調整事務を統轄する立場にある。本件請託は、まさにこの行政各部にわたる総合調整を必要とする事務に該当するため、内閣官房長官の職務権限に属すると評価される。
結論
被告人の行為は、内閣官房長官の職務権限に属する事務に関し請託を受けて賄賂を収受したものといえ、受託収賄罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、内閣官房長官の包括的な総合調整権限を肯定し、その職務権限が極めて広範に及ぶことを示したものである。司法試験においては、政治家や上級行政官の職務権限が問題となる場面で、根拠法令(内閣法等)から導かれる抽象的な職務権限を認定する際のリーディングケースとして活用できる。特に「行政各部の施策の統一保持」というキーワードは、権限の広汎性を論証する上で不可欠である。
事件番号: 昭和27(れ)197 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: 棄却
官庁内部における各分課の諸規程等の文理上からは、厳密にいえばその職務の範囲に属するといえないとしても、その権限に属する職務を執行するに当り、その職務執行と密接な関係を有する行為をすることによつて相手方より金品を収受すれば、賄賂罪の成立を妨げるものでないとする趣旨は、当裁判所の判例とするところでもある(昭和二四年(れ)第…