大蔵事務官として南九州財務局長官官房総務課文書係である者は、同財務局(理財部金融課)の行う金融機関の業務および財産の検査についても、その日時の事前内報をしてはならない職務を有する。
収賄罪の「職務」にあたる事例
刑法197条1項,大蔵省組織規程57条,大蔵省組織規程58条1項,大蔵省組織規程60条,大蔵省組織規程63条
判旨
公務員がその職務権限に直接属しない事項であっても、職務と密接な関連を有する行為に関し、請託を受けて賄賂を収受した場合には、刑法197条1項の収賄罪が成立する。
問題の所在(論点)
財務局の文書係という立場にある公務員が、職務上の秘密である金融検査日時の漏洩(内報)や監督上の便宜供与を約束して金員を受領した行為が、刑法197条1項の「職務に関し」賄賂を収受したといえるか。
規範
収賄罪(刑法197条1項)にいう「職務に関し」とは、公務員の具体的・直接的な職務権限に属する事務のみならず、これと密接な関連を有する事務をも含む。また、職務を遂行する上で遵守すべき義務(内報の禁止等)に反する行為を約束し、金員を受領する場合も、当該公務員の職務上の地位に基づき行われる以上、「職務に関し」賄賂を収受したものと認められる。
重要事実
大蔵省事務官として南九州財務局長官房総務課文書係に勤務していた被告人は、Aから、同局が行う金融検査日時の事前内報および将来の監督上の便宜を求められ、これを承諾した。被告人はその謝礼として、合計24万円の現金の供与を受けた。被告人の具体的な事務分担に金融検査の実施通知等が含まれていたかは不明であるが、文書係という立場にあった。
あてはめ
被告人は大蔵省事務官として財務局総務課文書係の地位にあり、公務員としての身分を有していた。かかる地位にある者は、金融検査の日時等の機密情報を外部に漏洩してはならない職務上の義務を負っている。したがって、検査日時の内報や監督上の便宜供与という請託を承諾して金員を受領することは、被告人が本来有する職務上の地位や義務に密接に関連する行為であると評価できる。よって、本件の金員収受は職務に関連して行われたものと解される。
結論
被告人の行為は、その職務に関し請託を受けて賄賂を収受したものとして、収賄罪が成立する。
実務上の射程
本判決は「職務関連性」を広く解認める立場を示したものである。答案上では、具体的権限の有無が微妙なケースであっても、一般的職務権限や職務上遵守すべき義務(秘密保持等)との関連性を指摘することで、収賄罪の成立を肯定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)1087 / 裁判年月日: 昭和32年12月19日 / 結論: 棄却
公務員の斡旋行為が当該公務員の担当職務の執行と密接な関係にある場合には、その行為は収賄罪にいわゆる「其職務ニ関スル」ものということができる。