官庁内部における各分課の諸規程等の文理上からは、厳密にいえばその職務の範囲に属するといえないとしても、その権限に属する職務を執行するに当り、その職務執行と密接な関係を有する行為をすることによつて相手方より金品を収受すれば、賄賂罪の成立を妨げるものでないとする趣旨は、当裁判所の判例とするところでもある(昭和二四年(れ)第八五六号同二五年二月二八日第三小法廷判決、昭和二五年(れ)第一二四九号同二六年一月一八日第一小法廷判決参照)。
公務員の職務執行と密接な関係にある行為に対する金品の収受と賄賂罪の成立
刑法197条1項
判旨
賄賂罪(刑法197条等)における「職務」とは、公務員の法令上の権限に属する事務のみならず、それと密接な関係を有する行為をも含む。
問題の所在(論点)
刑法上の収賄罪における「職務に関する」との要件について、公務員の法令上の具体的・直接的な職務権限の範囲内に限定されるか、あるいはそれと密接に関連する行為まで含まれるか。
規範
賄賂罪の「職務」に関する範囲について、官庁内部の諸規程の文理上、厳密には当該公務員の職務範囲に属するといえない事項であっても、その権限に属する職務を執行するに際し、その職務執行と密接な関係を有する行為(密接関連事務)をすることによって金品を収受した場合には、賄賂罪が成立する。
重要事実
被告人Aは、農林省(当時)林野局の企画課長等の職にあり、資材の割当等に関する事務に携わっていた。Aは、本来の事務分掌や官制上の規定を厳密に解釈すれば自己の職務権限には直接含まれないとされる「割当資材の現物化に対する手配」等の行為に関し、相手方から賄賂を受領した。弁護人は、当該行為がAの職務権限外の事項であり、賄賂罪の客体となる職務に当たらないと主張して争った。
あてはめ
被告人Aの職務権限について、林野局の事務分掌や官制、分課規程等を詳細に検討すると、被告人は割当資材の現物化等の手配についても職務権限を有していたと認められる。仮に、官庁内部の規程を厳密に解釈して職務範囲に属さないとみる余地があったとしても、被告人が本来の職務を執行するにあたり、これと密接な関係を有する行為を行うことは、公務の適正およびこれに対する社会の信頼を害するものである。本件における資材手配等の行為は、企画課長等の地位に伴う職務執行と密接に関連するものであるといえるため、当該行為に関して金品を受領することは、職務に関する収受にあたる。
結論
被告人の行為は「職務に関する」ものと認められ、収賄罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、賄賂罪の保護法益である「公務の不可買収性・適正」および「公務の適正に対する社会の信頼」を重視し、職務の範囲を広く解認める「密接関連事務」の法理を確立したものである。司法試験においては、具体的権限の有無が微妙な事案において、本規範を用いて「事務の性質上の関連性」や「地位との関係」から職務性を肯定するあてはめを行う際に必須となる。
事件番号: 昭和28(あ)1087 / 裁判年月日: 昭和32年12月19日 / 結論: 棄却
公務員の斡旋行為が当該公務員の担当職務の執行と密接な関係にある場合には、その行為は収賄罪にいわゆる「其職務ニ関スル」ものということができる。