昭和二五年一二月二九日総理府令第五二合警察予備隊の部隊の編成及び組織に関する規程一八条によると、警察予備隊総隊総監部管理部長は、被服その他の需品の購入、配分及び保管の計画並びに補給計画の策定に関する事務等をその職務とするものと定められているところ、原審の認定によれば、進駐軍指令部の指示により、需品の購入等の調達事務も管理部において取り扱うこととされ、原審相被告人鎌田は、調達班長として上司の命令により右調達事務を処理していた。そして管理部における右調達事務は前示総理府令一八条による管理部長の職務と密接に関連するものということができるから、原審が、鎌田の右調達事務の処理を同人の公務員としての地位に伴う職務に該当すると判示したのは正当である。
警察予備隊総隊総監部管理部調達班長の職務
警察予備隊の部隊の編成及び組織に関する規程(昭和25年12月29日総理府令52号)18条,刑法197条,刑法198条
判旨
賄賂罪における「職務」とは、公務員の法令上の権限に属する事務だけでなく、これと密接に関連する事務も含まれる。警察予備隊の管理部長の職務に関連して、事実上処理していた調達事務も、本来の職務と密接な関連がある限り職務性を有する。
問題の所在(論点)
刑法197条1項等の賄賂罪における「職務」の範囲が問題となる。特に、法令上明示された権限(本件では計画策定等)を超えて、事実上行われていた事務(本件では実際の調達事務)が「職務」に含まれるか。
規範
刑法上の賄賂罪における「職務」とは、公務員がその地位に伴い法令上担当すべきものとされている事務(本来の職務)のみならず、それと密接に関連する事務をも包含する。法令上の具体的根拠が不十分であっても、組織上の権限と密接な関連性を有し、事実上その事務を処理している場合には、当該公務員の職務に該当すると解すべきである。
重要事実
警察予備隊総隊総監部管理部において、管理部長は法令(昭和25年総理府令第52号18条)に基づき需品の購入・配分・保管の計画策定等を職務としていた。他方、実際の調達(購入等)事務については、進駐軍指令部の指示により、事実上管理部において取り扱う運用がなされていた。被告人Cは、管理部の調達班長として上司の命令によりこれら調達事務を処理しており、その事務に関し賄賂の授受が行われた。
あてはめ
本件における調達事務は、法令上規定された管理部長の職務である「需品の購入等の計画策定」等と切り離せない関係にあり、計画を実現するための実行過程として密接に関連するものといえる。また、進駐軍の指示という当時の特殊な事情に基づき、上司の命令によって組織的に当該事務が処理されていた実態がある。したがって、被告人Cが担当していた調達事務は、その地位に伴う公務員としての職務に該当すると評価できる。
結論
被告人Cによる調達事務の処理は、公務員としての職務に該当する。したがって、当該事務に関連して利益を授受した行為について、賄賂罪の成立を認めた原判決の判断は正当である。
実務上の射程
本判決は「職務密接関連事務」という概念を認め、賄賂罪の保護法益である職務の公正およびそれに対する社会の信頼を広く保護する立場を明確にしている。答案作成上は、(1)法令上の職務権限を特定し、(2)問題となる事務がその権限とどのような関係(補助的・随伴的等)にあるかを具体的事実から抽出して、(3)「密接に関連する事務」として職務性を肯定する流れで活用すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)665 / 裁判年月日: 昭和32年2月22日 / 結論: 棄却
刑法第一九七条にいう公務員の職務とは、公務員または公務員とみなされる者がその地位に伴い公務または公務とみなされる事務として取扱う一切の執務を指称し、必ずしも贈賄者との間に指揮監督の関係があることを要しない。