手品ないしマジック用に変造された貨幣(いわゆるギミックコイン)を貨幣損傷等取締法及び関税法が規制することは,憲法21条1項に含まれる手品ないしマジックを演じる自由を侵害するとの主張が,欠前提処理された事例
憲法21条1項,貨幣損傷等取締法2項,貨幣損傷等取締法3項,関税法(平成18年法律第17号による改正前のもの)69条の8第1項6号,関税法(平成18年法律第17号による改正前のもの)109条1項,関税法(平成18年法律第17号による改正前のもの)109条3項後段
判旨
貨幣損傷等取締法等は貨幣の信用の維持等を目的とするものであり、手品を演ずる自由を不当に規制するものではなく、憲法21条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
貨幣の損傷等や模造品の輸入を禁止する貨幣損傷等取締法および関税法が、手品を演ずる自由を侵害し、憲法21条1項に違反するか。
規範
特定の表現活動(本件では手品ないしマジックを演ずる自由)への制限が問題となる場合でも、制限の根拠となる法令が貨幣の信用の維持や経済取引の円滑化といった正当な公共の利益を目的とし、かつ当該活動そのものの禁止を目的としていないのであれば、憲法21条1項に違反しない。
重要事実
被告人は、手品(マジック)に使用する目的で貨幣を損傷等し、または損傷等する目的で貨幣を集めたこと、および貨幣の模造品を輸入したことについて、貨幣損傷等取締法違反および関税法違反に問われた。これに対し弁護人は、これらの規制が表現の自由(手品を演ずる自由)を保障する憲法21条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
貨幣損傷等取締法は貨幣の信用維持と経済取引の円滑化を目的として貨幣の損傷等を禁止するものであり、関税法も同様の目的から模造品の輸入を禁止するものである。これらの規定は、あくまで貨幣制度の根幹を守るための規制であって、手品を演ずるという表現活動そのものを禁止したり、その内容を規制したりすることを目的とするものではない。したがって、これらの規制により手品に制約が生じたとしても、それは付随的なものにすぎない。
事件番号: 昭和43(あ)2781 / 裁判年月日: 昭和45年4月24日 / 結論: 棄却
一 本件通貨模造行為(判文参照)が芸術上の表現活動のためのものであつたとしても、その模造された通貨が、真正の通貨と誤認されるおそれがあり、欺罔手段としても用いられる危険性を帯有し、経済生活一般に不安をきたすおそれがあると認められる以上、これを通貨及証券模造取締法一条、二条により処罰しても、憲法二一条に違反するものではな…
結論
貨幣損傷等取締法および関税法は、手品を演ずる自由を規制するものではなく、憲法21条1項に違反しない。
実務上の射程
公共の福祉に基づく表現の自由の制約に関する判例。規制の目的が正当であり、かつ表現活動そのものの規制を意図していない「内容中立的な制約」が問題となる事案において、合憲性を肯定する論拠として引用できる。
事件番号: 平成7(あ)1009 / 裁判年月日: 平成8年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法109条(輸入禁制品の輸入罪)の合憲性について、いわゆる「わいせつ物」の輸入を禁止・処罰することは、憲法13条、19条、21条、31条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、関税法109条(平成6年法律第118号による改正前のもの)に基づき、輸入禁制品(わいせつな図画等)を輸入したとして…
事件番号: 昭和45(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国為替及び外国貿易管理法による支払等の制限およびこれに違反した者への刑罰規定は、公共の福祉のために必要な制限として、憲法22条1項および29条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の外国為替及び外国貿易管理法(外為法)27条1項3号が禁ずる無許可の支払等を行い、同法70条7号に基づ…
事件番号: 昭和41(あ)809 / 裁判年月日: 昭和45年10月21日 / 結論: 棄却
一 輸出許可の効力は、輸出申告書に記載された貨物と同一か、少なくともこれと同一性の認められる貨物にのみ及ぶ。 二 輸出申告書に園芸用品名を記載して輸出許可を受け、これと全く別異の洋食器を輸出したときは、無許可輸出罪が成立する。 三 昭和四二年法律第一一号による改正前の関税法一一八条二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物等の所…
事件番号: 昭和26(あ)3457 / 裁判年月日: 昭和27年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告趣旨であっても、その実質が単なる訴訟法違反の主張に過ぎない場合には、刑事訴訟法405条に定める適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を理由として上告を申し立てた。しかし、その具体的な主張内容は、憲法問題というよりは刑事訴訟法等の訴訟手続の不備を指摘…