一 輸出許可の効力は、輸出申告書に記載された貨物と同一か、少なくともこれと同一性の認められる貨物にのみ及ぶ。 二 輸出申告書に園芸用品名を記載して輸出許可を受け、これと全く別異の洋食器を輸出したときは、無許可輸出罪が成立する。 三 昭和四二年法律第一一号による改正前の関税法一一八条二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物等の所有者または占有者であつたものに限られず、当該犯罪に関与したすべての犯人を含む趣旨である。 四 昭和四二年法律第一一号による改正前の関税法一一八条二項は、憲法三一条、二九条に違反しない。
一 輸出許可の効力の及ぶ貨物の範囲 二 輸出申告書に記載した貨物名と全く別異の貨物を輸出する所為と無許可輸出罪の成否 三 昭和四二年法律第一一号による改正前の関税法一一八条二項により追徴を科せられる犯人の範囲 四 昭和四二年法律第一一号による改正前の関税法一一八条二項と憲法三一条、二九条
関税法111条1項,関税法67条,関税法118条2項(昭和42年法律11号による改正前のもの),憲法29条,憲法31条
判旨
関税法上の輸出許可の効力は、輸出申告書記載の貨物と同一性が認められる範囲に限られる。また、同法上の追徴の対象となる「犯人」には、犯罪貨物の所有者や占有者に限らず、当該犯罪に関与したすべての共犯者が含まれる。
問題の所在(論点)
1. 輸出申告書と異なる貨物を輸出した場合、当初の輸出許可の効力が及び無許可輸出罪の成立が否定されるか。 2. 犯罪貨物の所有者や占有者でない共犯者に対しても、没収に代わる追徴を科すことができるか(「犯人」の範囲)。
規範
1. 輸出許可の効力は、輸出申告書に記載された貨物と同一、または少なくともこれと同一性の認められる貨物にのみ及ぶ。 2. 関税法118条2項(改正前)にいう「犯人」とは、没収に代わる追徴の性質に鑑みても、犯罪貨物等の所有者または占有者であった者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。
事件番号: 平成4(あ)499 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて…
重要事実
被告人らは、洋食器を輸出するにあたり、輸出申告書には「園芸用品」と記載して税関の許可を得た。実際には記載と全く異なる洋食器を輸出したため、無許可輸出罪(関税法111条1項)に問われた。また、犯罪貨物の所有者ではない被告人らに対しても、貨物の没収が不能であったことから、同法118条2項に基づき、貨物価格相当額の追徴が科された。
あてはめ
1. 本件で得られた許可は「園芸用品」に対するものであるが、現実に輸出されたのは「洋食器」であり、両者の間には同一性が認められない。したがって、洋食器については税関の許可がないものといえる。 2. 関税法118条2項は「犯人」の範囲を限定する規定を置いていない。没収・追徴には制裁的性格も含まれることから、犯罪に関与したすべての共犯者が追徴の対象となり得る。被告人らが所有者でないとしても、関税法違反の犯人である以上、追徴を免れない。
結論
1. 本件洋食器の輸出は無許可輸出罪を構成する。 2. 犯罪貨物の所有者等でない被告人らに対する追徴も適法であり、憲法31条・29条に違反しない。
実務上の射程
行政法規上の許可の効力範囲を「同一性」で画定する判断枠組みとして参考になる。また、刑事法における没収・追徴の対象者について、文言を重視し共犯者全員への適用を認めた点に射程がある。もっとも、現行法や他罪の追徴規定における解釈(利得の有無等)とは慎重に比較検討すべきである。
事件番号: 昭和51(あ)1045 / 裁判年月日: 昭和52年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項(昭和42年改正前)に基づき追徴を科される「犯人」とは、没収の対象となる犯罪貨物等の所有者に限られず、当該犯罪に関与したすべての犯人を指す。この解釈は憲法29条1項の財産権の保障に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和42年改正前の関税法違反(密輸入等)の罪に問われた。原…
事件番号: 昭和44(あ)2749 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政行為に重大かつ明白な瑕疵がない限り、虚偽の手段によって得られた許可であっても有効であり、その許可に基づく行為に無許可罪は成立しない。 第1 事案の概要:被告人は、実際には標準外決済方法による輸出であるにもかかわらず、他人名義の輸出申告書等を買い受け、標準決済方法による輸出であると装って税関長に…
事件番号: 昭和42(あ)346 / 裁判年月日: 昭和42年10月12日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項に違反して輸出された犯罪貨物に関し、同法第一一八条第二項に定める「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、その犯罪が行なわれた当時における犯罪貨物の国内卸売価格を指し、右価格中には内国消費税および通常の卸売取引における適正利潤が含まれるものと解するのを相当と…