関税法一一八条二項が憲法二九条一項に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例
判旨
関税法118条2項(昭和42年改正前)に基づき追徴を科される「犯人」とは、没収の対象となる犯罪貨物等の所有者に限られず、当該犯罪に関与したすべての犯人を指す。この解釈は憲法29条1項の財産権の保障に違反しない。
問題の所在(論点)
関税法118条2項に基づく追徴の対象となる「犯人」の範囲、および、貨物の非所有者に対して追徴を科すことが憲法29条1項の財産権侵害に該当するか。
規範
関税法118条2項にいう「犯人」とは、犯罪貨物等の所有者であることを要せず、当該犯罪に関与したすべての正犯・共犯を包含する。本規定は犯罪による不法な利得を剥奪し、または禁制物品の流入を抑止する行政上の目的を併せ持つ制裁であり、所有者以外の犯人に対しても追徴を課すことは憲法29条1項に違反しない。
重要事実
被告人は、昭和42年改正前の関税法違反(密輸入等)の罪に問われた。原審は、犯罪貨物の没収が不能であるとして、被告人に対して当該貨物の価額の追徴を命じた。これに対し被告人側は、追徴の対象となる「犯人」とは犯罪貨物の所有者に限られるべきであり、非所有者に追徴を科すことは憲法29条1項の保障する財産権を侵害するものであるとして上告した。
あてはめ
判例(大法廷昭和39年7月1日決定等)の趣旨に照らせば、同条項の「犯人」を所有者に限定する根拠はない。追徴は没収に代わる性質を有するのみならず、密貿易の抑止という政策的目的を有する。したがって、犯罪行為に加担した者であれば、貨物の帰属にかかわらず追徴の主体となり得ると解される。本件においても、被告人が当該犯罪に関与した事実が認められる以上、所有権の有無を問わず追徴を免れない。
結論
事件番号: 平成4(あ)499 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて…
関税法上の追徴の対象は所有者に限定されない。したがって、被告人に対する追徴認定および同条の合憲性を肯定した原判断は妥当である。
実務上の射程
密輸出入事件における追徴の対象者について、共犯者全員が連帯して(あるいは個別に)追徴の対象となり得ることを示す射程を持つ。答案上では、刑法19条の2の追徴の原則(利得の有無等)との差異に留意しつつ、特別法である関税法の規定が「犯人」という文言を用いている場合の解釈指針として活用する。
事件番号: 昭和38(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条1項及び2項に規定する「犯人」とは、密輸品の所有者に限定されず、犯罪の実行行為者、教唆者、幇助者の全員を指す。また、没収不能の場合の追徴は、犯人が連帯してその価額を納付すべき義務を負うと解される。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bらは、関税法違反(密輸)の罪に問われた。原審は、…
事件番号: 昭和37(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和39年7月1日 / 結論: 棄却
一 法人の代表者に対する関税法違反被告事件において、同法第一一八条第一項により、第三者たるその法人所有の犯罪貨物を没収するにあたつては、被告人に対して犯罪事実に関する弁解、防禦の機会が与えられているかぎり、改めてその法人に対してこれらの機会を与えることを要しない。 二 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物…