判旨
関税法118条1項及び2項にいう「犯人」とは、犯罪貨物の所有者または占有者に限らず、当該犯罪に関与したすべての犯人を含む。また、同条項に基づく没収・追徴の規定は、憲法29条(財産権)及び憲法31条(適正手続)に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 関税法118条2項(没収・追徴)にいう「犯人」の意義と範囲。 2. 同条項による没収・追徴の規定が、憲法29条(財産権)および憲法31条(適正手続)に違反するか。
規範
関税法118条に規定される「犯人」は、没収の対象となる貨物の占有や所有といった物権的関係を有する者に限定されない。当該密輸入等の犯罪行為に加功した者であれば、共犯者を含め「犯人」に含まれると解すべきである。また、第三者の所有物であっても、それが犯罪に供されたものである場合には、適正手続を前提とした没収規定は合憲である(大法廷判決の趣旨を引用)。
重要事実
被告人Bは関税法違反の罪に問われ、有罪判決とともに同法118条に基づき貨物の没収または追徴を言い渡された。これに対し被告人側は、同条項にいう「犯人」の解釈を限定すべきであり、また無関係な第三者の財産権を侵害するおそれがある等の理由から、同条項は憲法29条および31条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
関税法118条2項の「犯人」の意義について検討するに、同条の趣旨は犯罪貨物の流通を阻止し、不正な利益を剥奪することにある。したがって、その範囲を貨物の所有者や占有者に限定する合理的理由はなく、犯罪に関与したすべての者を含むと解するのが相当である。また、憲法違反の点については、すでに確立された最高裁大法廷判決(昭和39年7月1日決定等)の趣旨に照らせば、適正な手続の下で犯罪関連事物を没収することは公共の福祉に基づく合理的な制限であり、憲法29条、31条に違反しないといえる。
結論
関税法118条2項の「犯人」には犯罪に関与した者すべてが含まれ、同条項は憲法29条および31条に違反しない。したがって、上告は棄却される。
事件番号: 平成4(あ)499 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて…
実務上の射程
刑事法における没収・追徴の対象者(「犯人」)の解釈指針として活用できる。特に、共犯者が複数いる場合に、直接の所有関係がない被告人に対しても追徴を課す際の根拠となる。また、第三者所有物の没収に関する合憲性判断のリーディングケース(大法廷判決)を再確認する文脈で参照される。
事件番号: 昭和51(あ)1045 / 裁判年月日: 昭和52年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項(昭和42年改正前)に基づき追徴を科される「犯人」とは、没収の対象となる犯罪貨物等の所有者に限られず、当該犯罪に関与したすべての犯人を指す。この解釈は憲法29条1項の財産権の保障に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和42年改正前の関税法違反(密輸入等)の罪に問われた。原…