一 他人の依頼により関税法第一一二条第一項の犯罪貨物の処分の媒介をした者が、その後その処分により該貨物を取得した者の依頼によりこれを他に運搬した場合には、媒介罪のほかに運搬罪が成立する。 二 関税法第一一八条第二項による追徴をする場合に、犯罪貨物を取得した第三者を訴訟手続に参加させなくても、憲法第三一条、第二九条に違反しない。 三 関税法第一一二条にいう保管とは、委託を受けて犯罪貨物を自己の管理下におくことをいい、その目的のいかんを問わないものと解するのが相当である。 四 犯人が関税法第一一八条第一項の犯罪貨物を善意の第三者に譲渡した場合に、犯人からその価格を追徴することができることは、昭和三七年(あ)一二四三号同三九年七月一日大法廷判決の趣旨とするところである。
一 同一の犯罪貨物について関税法第一一二条第一項の媒介と運搬の両罪の成立が認められた事例。 二 関税法第一一八条第二項による追徴をする場合に犯罪貨物を取得した第三者を訴訟手続に参加させないことは憲法第三一条、第二九条に違反するか。 三 関税法第一一二条にいう保管の意義。 四 犯人が犯罪貨物を善意の第三者に譲渡した場合に犯人からその価格を追徴することができるか。
関税法112条1項,関税法118条1項,関税法2項,関税法112条,関税法118条2項,憲法31条,憲法29条
判旨
関税法118条2項の「犯人」には、犯罪貨物を単に保管・運搬した者や処分の媒介をした者も含まれ、これら所有権を持たない共犯者に対しても没収不能の際の追徴を命じることができる。
問題の所在(論点)
関税法118条2項における「犯人」の範囲、および犯罪貨物の所有権を有しない共犯者に対して没収不能を理由とする追徴を科すことの可否。
規範
1. 関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入等の実行犯に限らず、情を知って犯罪貨物を運搬、保管、有償・無償で取得、または処分の媒介・あっせんをした者を含む。 2. 同条に基づく追徴は、共犯者全員に対して命じることが可能であり、犯罪貨物について所有権を有していたか否かを問わない。 3. 犯人が犯罪貨物を善意の第三者に譲渡したため没収できない場合でも、当該第三者を訴訟手続に参加させることなく、犯人からその価額を追徴することは憲法29条、31条に違反しない。
重要事実
被告人Aは他人の依頼により犯罪貨物の処分の媒介を行い、その後別の者の依頼で当該貨物を運搬した。被告人BおよびCは、犯罪貨物であることを知りながら、委託を受けて自己の管理下におき「保管」した。原審は、これらの物件が没収不能であるとして、所有者ではない被告人らに対してもその価額の追徴を言い渡した。これに対し被告人らは、単なる媒介・運搬・保管者にすぎない自分たちは「犯人」に含まれず、また所有権を持たない者への追徴は違憲であるとして上告した。
あてはめ
1. 被告人Aの行為は犯罪貨物の処分媒介および運搬であり、被告人B・Cの行為は犯罪貨物の保管である。これらは、判例が示す「情を知って犯罪貨物の運搬、保管、処分の媒介等をした者」に該当するため、いずれも関税法上の「犯人」にあたる。 2. 保管とは、その目的を問わず委託を受けて貨物を自己の管理下におくことを指すため、Bらの行為はこれに該当する。 3. 追徴は没収の換刑処分であるが、共犯者全員に追徴を命じうることは判例上確立された前提である。したがって、被告人らが所有者でないとしても、犯人である以上、没収不能の場合にその価額を追徴されることは法の予定するところであり、憲法にも違反しない。
結論
被告人らが犯罪貨物の所有者でない場合であっても、運搬、保管、処分の媒介等を行った「犯人」である以上、関税法118条2項に基づき追徴を免れない。上告棄却。
実務上の射程
行政刑法における没収・追徴の対象となる「犯人」の広範な解釈を維持するものである。司法試験においては、共犯者全員に対する相対的没収・追徴の原則を確認する際に引用される。特に、利益を得ていない単なる保管者や運搬者に対しても追徴を科しうる点に実務上の射程がある。
事件番号: 平成4(あ)499 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて…
事件番号: 昭和38(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条1項及び2項に規定する「犯人」とは、密輸品の所有者に限定されず、犯罪の実行行為者、教唆者、幇助者の全員を指す。また、没収不能の場合の追徴は、犯人が連帯してその価額を納付すべき義務を負うと解される。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bらは、関税法違反(密輸)の罪に問われた。原審は、…
事件番号: 昭和37(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和39年7月1日 / 結論: 棄却
一 法人の代表者に対する関税法違反被告事件において、同法第一一八条第一項により、第三者たるその法人所有の犯罪貨物を没収するにあたつては、被告人に対して犯罪事実に関する弁解、防禦の機会が与えられているかぎり、改めてその法人に対してこれらの機会を与えることを要しない。 二 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物…