一 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、密輸出入者およびその従犯、教唆犯はもとより、情を知つて犯罪貨物を運搬し、保管し、有償もしくは無償で取得し、またはその処分の媒介もしくはあつせんをした者など、当該犯罪に関与したすべての犯人をふくむ趣旨である。 二 密輸入者から情を知つて犯罪貨物を有償取得した者がこれを他に譲渡した場合においても、同人に対し関税法第一一八条第二項により追徴を科することができる。
一 関税法第一一八条第二項により追徴を科せられる犯人の範囲。 二 密輸入者から情を知つて犯罪貨物を有償取得した後これを他に譲渡した者に対する追徴の適否。
関税法118条,関税法112条
判旨
関税法118条2項にいう「犯人」には、密輸出入者やその共犯のみならず、情を知って犯罪貨物を運搬、保管、取得、または処分の媒介・斡旋をした者など、当該犯罪に関与したすべての者が含まれる。また、犯人が犯罪貨物を他に譲渡した場合であっても、当該犯人からその価額を追徴することができる。
問題の所在(論点)
1. 関税法上の没収・追徴の対象となる「犯人」に、所有者でない運搬人やあっせん等の関与者が含まれるか。2. 犯罪貨物を有償取得した犯人が、既にこれを転売・譲渡して占有を失っている場合でも、当該犯人から追徴できるか。
規範
関税法118条2項(現134条2項)にいう「犯人」とは、密輸出入者およびその従犯、教唆犯はもとより、情を知って犯罪貨物を運搬し、保管し、有償もしくは無償で取得し、またはその処分の媒介もしくはあっせんをした者など、当該犯罪に関与したすべての犯人を指す。また、犯罪貨物を一時取得した犯人がこれを他に譲渡した場合であっても、没収不能である以上、当該犯人に対し同条項に基づき追徴を科すことができる。
重要事実
被告人Aは、関税法違反の対象となる物件を単に運搬する行為に関与した。被告人BおよびCは、犯罪貨物であることを知りながらこれらを有償で取得したが、その後第三者に譲渡した。一審および二審は、Aについては運搬の犯罪事実に基づき、BおよびCについては有償取得の犯罪事実に基づき、それぞれ没収不能な物件の価額について追徴を言い渡した。これに対し被告人らは、単なる運搬人や、既に物件を手放した取得者には追徴を科せないとして上告した。
あてはめ
1. 関税法118条2項の趣旨は、犯罪に関与した者から不正な利益を剥奪するだけでなく、禁制物の流通防止等の行政目的も含まれる。したがって、所有権の有無にかかわらず、情を知って運搬等の関与をしたAも同条の「犯人」に該当する。2. 追徴は没収し得ない場合にその価額を徴収する手続である。BおよびCが犯罪貨物を有償取得した時点で「犯人」としての責任が発生しており、その後に転売して現に物件を保有していないことは、没収不能という追徴の要件を満たす事由にはなっても、追徴を免れさせる理由にはならない。したがって、譲渡済みのB・Cに対しても追徴は正当である。
結論
被告人らの上告を棄却する。単なる運搬者や、取得後に物件を譲渡した者であっても、関税法上の「犯人」として追徴の対象となる。
実務上の射程
本判決は、関税法における追徴の対象者を広汎に認めた。司法試験等の刑事法(特に行政刑法)の文脈では、没収・追徴の性質が「利得剥奪」に限定されるのか、それとも「制裁的・補充的」な性質を含むのかが問題となる。本判例は後者の立場に近く、共犯者全員から個別に全額追徴をなし得る(重複追徴)とする実務の根拠ともなっている。
事件番号: 昭和34(あ)1860 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条の犯人には、同法第一一二条にいわゆる「運搬等」をした者を包含する。
事件番号: 昭和37(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和39年7月1日 / 結論: 棄却
一 法人の代表者に対する関税法違反被告事件において、同法第一一八条第一項により、第三者たるその法人所有の犯罪貨物を没収するにあたつては、被告人に対して犯罪事実に関する弁解、防禦の機会が与えられているかぎり、改めてその法人に対してこれらの機会を与えることを要しない。 二 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物…
事件番号: 平成4(あ)499 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて…