関税法118条2項にいう「犯人」の意義と同条項の合憲性(憲法31条)
憲法31条,関税法118条2項
判旨
関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
関税法に基づく没収・追徴の規定において、その対象となる「犯人」の範囲が、貨物の所有者・占有者に限定されるか、あるいは共犯者を含む犯罪関与者全員を指すか。また、後者の解釈が憲法31条に抵触しないか。
規範
関税法118条2項(現行118条1項・2項参照)に規定される「犯人」とは、没収の対象となる犯罪貨物等を直接に所有または占有していた者に限られるものではない。当該犯罪行為に関与したすべての者を包含し、共犯者全員に対して追徴を課すことが可能であると解すべきである。
重要事実
被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて、その価額を追徴することが命じられた。これに対し、弁護人側は、追徴の対象となる「犯人」は貨物の所有者・占有者に限られるべきであり、それ以外の関与者にまで追徴を及ぼすことは憲法31条の適正手続に反すると主張して上告した。
あてはめ
関税法上の追徴は、犯罪による利得の剥奪のみならず、禁制商品の流通阻止や制裁的意図も含まれる。過去の大法廷判例(昭和39年7月1日、昭和45年10月21日)によれば、同法の「犯人」は貨物の占有の有無を問わず、共同正犯を含むすべての関与者を指すと解される。本件においても、被告人らが犯罪に関与した事実が認められる以上、貨物を現に占有していなかったとしても、同条項に基づき追徴の対象となることは憲法31条の適正手続の要請に反するものではない。
結論
関税法118条2項の「犯人」には、犯罪貨物の所有・占有の有無にかかわらず共犯者全員が含まれる。したがって、被告人らに対する追徴命令は適法であり、憲法違反には当たらない。
実務上の射程
行政刑罰における没収・追徴の対象者の解釈。特に関税法違反の事案において、共犯者全員に対して連帯的な責任(または各人への全額追徴)を問う際の根拠となる。答案上は、刑法一般の没収・追徴(19条・19条の2)の原則との差異(所有者に限らない点)を意識しつつ、関税法の目的から「犯人」の範囲を広く解する論証として活用する。
事件番号: 昭和51(あ)1045 / 裁判年月日: 昭和52年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項(昭和42年改正前)に基づき追徴を科される「犯人」とは、没収の対象となる犯罪貨物等の所有者に限られず、当該犯罪に関与したすべての犯人を指す。この解釈は憲法29条1項の財産権の保障に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和42年改正前の関税法違反(密輸入等)の罪に問われた。原…
事件番号: 昭和38(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条1項及び2項に規定する「犯人」とは、密輸品の所有者に限定されず、犯罪の実行行為者、教唆者、幇助者の全員を指す。また、没収不能の場合の追徴は、犯人が連帯してその価額を納付すべき義務を負うと解される。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bらは、関税法違反(密輸)の罪に問われた。原審は、…