判旨
行政行為に重大かつ明白な瑕疵がない限り、虚偽の手段によって得られた許可であっても有効であり、その許可に基づく行為に無許可罪は成立しない。
問題の所在(論点)
虚偽の申告に基づいて輸出許可を得た場合、当該許可は無効となり無許可輸出罪が成立するか。行政処分の瑕疵の程度と無許可罪の成否が論点となる。
規範
行政処分に「重大かつ明白な瑕疵」が認められない限り、当該処分は当然には無効とならず、有効なものとして取り扱われる。したがって、虚偽の申告に基づいて得られた許可であっても、公定力により有効である以上、その許可に基づく行為について無許可罪の構成要件を充足することはない。
重要事実
被告人は、実際には標準外決済方法による輸出であるにもかかわらず、他人名義の輸出申告書等を買い受け、標準決済方法による輸出であると装って税関長に申告した。被告人は、外国為替公認銀行の認証を受けた虚偽の書類を提出して税関長の許可を受けた上で、実際に貨物を輸出した。この行為について、虚偽申告罪(関税法113条の2)および無許可輸出罪(同法111条1項)の成否が問題となった。
あてはめ
本件における輸出許可は、他人名義の書類を流用し決済方法を偽るという虚偽の手段により得られたものである。しかし、このような事情は、行政行為を当然無効とするほどの「重大かつ明白な瑕疵」には当たらないと解される。そうすると、当該輸出許可は取り消されない限り有効な行政処分として存続する。被告人はこの有効な許可に基づいて輸出を行っているため、客観的に「許可を受けないで」輸出をしたとはいえない。
結論
虚偽申告罪は成立し得るが、無許可輸出罪は成立しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和44(あ)2357 / 裁判年月日: 昭和45年10月22日 / 結論: 棄却
輸出貨物代金前受証明書あるいは外貨交換済証明書を他から買い受けて、外国為替銀行の認証を受け、標準決済方法による輸出であるように装い、税関長に対し、右認証書を付し輸出申告をしてその許可を受けたうえ、貨物を輸出した場合は、右輸出許可が無効なものとはいえず、無許可輸出罪は成立しない。
行政法上の公定力の概念を刑法(行政刑罰)に適用した重要判例である。行政庁の許可を前提とする処罰規定(無免許、無許可等)において、許可の手続に瑕疵がある場合に、それが「当然無効」と言えるレベル(重大かつ明白)でない限り、刑事罰の対象とならないことを示す。答案では、行政行為の公定力と構成要件の該非をリンクさせる際に活用する。
事件番号: 昭和39(あ)1295 / 裁判年月日: 昭和40年11月26日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法二七条第一項第三号違反の罪と同法第四八条第一項に基づく命令に違反する罪とは、牽連犯ではない。
事件番号: 昭和41(あ)809 / 裁判年月日: 昭和45年10月21日 / 結論: 棄却
一 輸出許可の効力は、輸出申告書に記載された貨物と同一か、少なくともこれと同一性の認められる貨物にのみ及ぶ。 二 輸出申告書に園芸用品名を記載して輸出許可を受け、これと全く別異の洋食器を輸出したときは、無許可輸出罪が成立する。 三 昭和四二年法律第一一号による改正前の関税法一一八条二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物等の所…
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
事件番号: 昭和42(あ)2280 / 裁判年月日: 昭和44年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法(昭和41年法律第36号による改正前)110条1項1号、2項に基づく関税逋脱未遂罪の成否について、原判決の法令適用に誤りはないとして、上告を棄却した。 第1 事案の概要:被告人が関税を免れる目的をもって、何らかの行為(具体的な事案の詳細は本判決文からは不明)に及んだところ、関税法違反(関税逋…