輸出貨物代金前受証明書あるいは外貨交換済証明書を他から買い受けて、外国為替銀行の認証を受け、標準決済方法による輸出であるように装い、税関長に対し、右認証書を付し輸出申告をしてその許可を受けたうえ、貨物を輸出した場合は、右輸出許可が無効なものとはいえず、無許可輸出罪は成立しない。
無許可輸出罪の成立が否定された事例
関税法111条1項,関税法67条,関税法113条の2
判旨
虚偽の認証書を用いた輸出申告に基づき税関長の許可を得て貨物を輸出した場合、当該許可に重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない限り、関税法上の無許可輸出罪は成立しない。
問題の所在(論点)
虚偽の手段によって得られた輸出許可に基づく輸出が、関税法111条1項の「無許可輸出罪」における「許可を受けないで」貨物を輸出した場合に該当するか。すなわち、瑕疵ある許可の効力が否定されるかどうかが問題となる。
規範
行政処分が重大かつ明白な瑕疵を有し当然無効と解される場合を除き、行政庁が下した許可は有効なものとして取り扱われる。したがって、虚偽の申告に基づいて得られた輸出許可であっても、それが直ちに当然無効とならない限り、その許可に基づく輸出は関税法上の「無許可」輸出には当たらない。
重要事実
被告人は、Aらが実際には標準外決済方法による輸出であるにもかかわらず、外貨交換済証明書等を不正に取得し、標準決済方法を装って税関長に輸出申告を行い、その許可を得て輸出を計画していることを認識していた。被告人は、Aらに対して外貨交換済証明書を売り渡すなどの行為を行い、輸出申告及び輸出を幇助したとして、関税法違反(虚偽申告幇助及び無許可輸出幇助)等で起訴された。
事件番号: 昭和44(あ)2749 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政行為に重大かつ明白な瑕疵がない限り、虚偽の手段によって得られた許可であっても有効であり、その許可に基づく行為に無許可罪は成立しない。 第1 事案の概要:被告人は、実際には標準外決済方法による輸出であるにもかかわらず、他人名義の輸出申告書等を買い受け、標準決済方法による輸出であると装って税関長に…
あてはめ
本件における輸出許可は、虚偽の認証書を提出して得られたものではあるが、その瑕疵が重大かつ明白であるとまではいえず、当然無効とは解されない。そうである以上、当該輸出は税関長の有効な許可に基づいて行われたものというべきである。したがって、正犯について虚偽申告罪が成立するとしても、客観的に許可が存在する以上、無許可輸出罪は成立し得ず、その幇助罪も成立しない。
結論
虚偽申告による輸出許可を得て輸出した場合、当該許可が無効でない限り無許可輸出罪は成立しない。本件では同罪の成立を認めた原審の判断に誤りがあるが、他罪との観念的競合により処断刑に影響しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の公定力と刑事罰の関係を示す重要判例である。行政許可を前提とする刑罰法規(無免許、無許可等)の解釈において、許可の取得過程に不正があっても、その許可が当然無効といえるほどの重大かつ明白な瑕疵がない限り、構成要件該当性が否定されることを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和41(あ)809 / 裁判年月日: 昭和45年10月21日 / 結論: 棄却
一 輸出許可の効力は、輸出申告書に記載された貨物と同一か、少なくともこれと同一性の認められる貨物にのみ及ぶ。 二 輸出申告書に園芸用品名を記載して輸出許可を受け、これと全く別異の洋食器を輸出したときは、無許可輸出罪が成立する。 三 昭和四二年法律第一一号による改正前の関税法一一八条二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物等の所…
事件番号: 昭和42(あ)582 / 裁判年月日: 昭和47年3月9日 / 結論: その他
一 上告審が、第一審判決を破棄した控訴審判決を破棄して第一審判決を維持するのを相当と認めるときは、第一審判決と同一内容の主文を表示するかわりに、控訴を棄却する旨の主文を表示してもよい。 二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪とは併合罪の関係にある。 三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実…
事件番号: 昭和24(れ)2514 / 裁判年月日: 昭和25年2月17日 / 結論: その他
昭和二三年七月七日法律第一〇七號(施行交付當日)所得税法の一部を改正する等の法律第二三條をもつ改正された、關税法第八二條の四の規定に依ればその本文においては一應刑法第六三條從犯減輕の規定の適用を排除しているけれども、その但書において、關税法第七六條第一項違反の所犯者を懲役の刑に處するときは、刑法第六三條は尚その適用ある…