昭和二三年七月七日法律第一〇七號(施行交付當日)所得税法の一部を改正する等の法律第二三條をもつ改正された、關税法第八二條の四の規定に依ればその本文においては一應刑法第六三條從犯減輕の規定の適用を排除しているけれども、その但書において、關税法第七六條第一項違反の所犯者を懲役の刑に處するときは、刑法第六三條は尚その適用あるものと定めていることが明瞭である。しかるに被告人Aの所爲につき原判決の確定した事實に依れば、被告人の所爲は右關税法第七六條第一項違反行爲の幇助である事實を確定し且つその所定刑中懲役刑を選擇しながら、その擬律において刑法第六三同第六八條第三號を適用していないことは、原判文上明らかである。しからば原判決は右に關する擬律錯誤の違法ありと謂うべくそしてこの違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである。
關税法違反行爲の幇助の事實に對し懲役刑を選擇しながら刑法第六三條、第六八條第三號の適用をしない判決の違法
刑法63條,刑法68條3號,舊刑訴法360條1項
判旨
関税法(昭和23年法律第107号による改正後)第82条の4に基づき、同法第76条第1項違反の幇助犯に対して懲役刑を選択する場合、刑法第63条による従犯減軽を適用すべきである。
問題の所在(論点)
関税法第76条第1項違反の幇助犯に対し、同法第82条の4但書に基づき懲役刑を選択した場合において、刑法第63条による従犯減軽を適用しないことは擬律錯誤の違法に当たるか。
規範
関税法等の特別法において従犯減軽の適用を原則として排除する規定がある場合であっても、法律の但書等の例外規定により、特定の刑(懲役刑等)を選択する際に刑法第63条の適用を認めているときは、必ず同条及び刑法第68条第3号に基づき法律上の減軽を行わなければならない。
重要事実
被告人Aは、改正後の関税法第76条第1項違反(密輸入等)の幇助行為を行った。原審は、被告人Aの所為を同法違反の幇助事実と認定し、所定刑の中から懲役刑を選択したが、擬律に際して刑法第63条(従犯減軽)及び同法第68条第3号を適用せずに量刑を算定した。
事件番号: 昭和52(あ)1072 / 裁判年月日: 昭和53年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が判例違反をいう点について、引用判例が事案を異にし適切でない場合や、単なる量刑不当の主張に留まる場合は、刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、原審の罪数判断に不相当な点があっても、直ちに刑訴法411条により判決を取り消すべきものとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪数…
あてはめ
改正後の関税法第82条の4本文は、原則として刑法第63条の適用を排除している。しかし、同条但書は、同法第76条第1項違反の者が懲役刑に処せられる場合には刑法第63条を適用すると明示している。本件被告人Aに対し、原審は事実認定において幇助犯であることを認め、かつ懲役刑を選択している以上、法律の定めに従い従犯減軽を行うべきであったが、これを怠った原判決には判決に影響を及ぼす明らかな擬律錯誤がある。
結論
原判決中被告人Aに関する部分は、擬律錯誤の違法があるため破棄を免れない。自判により、刑法第63条及び第68条第3号を適用し、被告人Aを懲役6月に処する。
実務上の射程
特別法における刑法総則適用の成否に関する事例である。答案上は、特別法に独自の刑の加重減軽規定がある場合、その条文構造(本文と但書の関係)を正確に解釈し、法律上の減軽事由を落とさずに適用すべきことを示す資料となる。
事件番号: 昭和55(あ)515 / 裁判年月日: 昭和57年2月17日 / 結論: 棄却
一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。 二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。
事件番号: 昭和26(れ)1337 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正犯が密輸出を企図していることを認識しながら、当該密輸出を容易にする物品の売買行為を行った場合、正犯の実行行為を容易ならしめたものとして、刑法62条1項の幇助犯が成立する。 第1 事案の概要:被告人Dは、共犯者Bらが商品を密輸出する計画を立てていることを察知していた。それにもかかわらず、DはBらに…
事件番号: 昭和44(あ)2357 / 裁判年月日: 昭和45年10月22日 / 結論: 棄却
輸出貨物代金前受証明書あるいは外貨交換済証明書を他から買い受けて、外国為替銀行の認証を受け、標準決済方法による輸出であるように装い、税関長に対し、右認証書を付し輸出申告をしてその許可を受けたうえ、貨物を輸出した場合は、右輸出許可が無効なものとはいえず、無許可輸出罪は成立しない。
事件番号: 昭和29(あ)1420 / 裁判年月日: 昭和33年3月18日 / 結論: その他
第一審判決が無免許輸入未遂幇助の事実について犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した場合に、控訴裁判所がその点について何ら事実の取調をすることなく右判決を破棄し、訴訟記録および第一審裁判所において取り調べた証拠のみによつて直ちに右無免許輸入未遂幇助の事実についても有罪の判決をすることは、たとえ第一審判決中に被告人の同一船…