一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。 二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。
一 幇助罪の個数 二 幇助罪が数個成立する場合と刑法五四条一項にいう一個の行為
刑法54条1項,刑法62条1項,覚せい剤取締法41条1項1号
判旨
幇助罪の個数は正犯の罪の個数に従って決定されるが、1個の幇助行為により数個の正犯の罪を幇助した場合は、刑法54条1項前段により観念的競合となる。
問題の所在(論点)
1個の幇助行為によって併合罪の関係にある数個の正犯の罪を幇助した場合、幇助罪の個数および罪数関係(併合罪か観念的競合か)をいかに解すべきか。
規範
1. 幇助罪の個数は、正犯の犯行を幇助することによって成立するものであるから、正犯の罪の個数に従って決定される。 2. 成立した数個の幇助罪が刑法54条1項の「一個の行為」にあたるか否かは、幇助犯自体のした幇助行為を基準に判断すべきである。
重要事実
被告人は、正犯らが2回にわたって覚せい剤を密輸入する際、その仕入資金に充てられることを知りながら、正犯から渡された現金等を銀行保証小切手に換えて交付した。この被告人による小切手の交付行為(幇助行為)は1回であったが、正犯による密輸入行為は2回(2個の罪)行われた。
事件番号: 昭和51(あ)661 / 裁判年月日: 昭和51年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤を隠匿携帯して本邦に搬入し、税関を通過する際に発見された場合、覚せい剤取締法違反(輸入)と関税法違反(無許可輸入)は、自然的・社会的見解上一個の行為と評価でき、観念的競合(刑法54条1項前段)の関係に立つ。 第1 事案の概要:被告人は、覚せい剤取締法上輸入が禁止され、かつ関税定率法上の有税…
あてはめ
本件では、正犯が2個の覚せい剤取締法違反の罪を犯しているため、被告人にも2個の幇助罪が成立する。もっとも、被告人の行為は、現金等を銀行保証小切手に換えて交付するという1個の行為によって行われている。幇助犯における行為の評価は、幇助行為そのものを基準とすべきであるから、本件幇助行為は1個と認められる。したがって、正犯の罪が併合罪の関係にあっても、被告人の2個の幇助罪は観念的競合の関係に立つ。
結論
被告人には2個の覚せい剤取締法違反幇助の罪が成立し、それらは観念的競合(刑法54条1項前段)となる。
実務上の射程
数個の正犯行為を1個の幇助行為で手助けした場合の罪数処理に関するリーディングケースである。答案では、まず「正犯の罪の数」を基準に罪の個数を確定し、次に「幇助者の行為の数」を基準に競合関係を論じる二段構えの構成をとる必要がある。共犯の処罰根拠(因果的共犯論)から、正犯の惹起した法益侵害の数に応じて罪の個数が決まる一方、責任の対象となる行為は幇助者自身の行為であるという論理を示す際に有用である。
事件番号: 平成5(あ)465 / 裁判年月日: 平成6年12月9日 / 結論: 棄却
日本国外で幇助行為をした者であっても、正犯が日本国内で実行行為をした場合には、刑法一条一項の「日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者」に当たる。
事件番号: 昭和49(あ)1431 / 裁判年月日: 昭和49年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法54条1項前段の「一個の行為」とは、自然的観察のもとで行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合をいい、麻薬を身体に携帯して本邦に搬入する行為は、麻薬取締法違反と関税法違反の観念的競合となる。 第1 事案の概要:被告人は、関税定率法上の輸入禁制品であり、かつ麻薬取締法上も輸入が禁止さ…
事件番号: 昭和52(あ)1278 / 裁判年月日: 昭和52年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法54条1項前段の「一個の行為」とは、自然的観察のもとで行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合を指し、覚せい剤の輸入行為が同時に関税法違反となる場合は観念的競合にあたる。 第1 事案の概要:被告人は、覚せい剤取締法上で輸入が禁止されている覚せい剤(塩酸フエニルメチルアミノプロパン結…
事件番号: 昭和52(あ)1072 / 裁判年月日: 昭和53年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が判例違反をいう点について、引用判例が事案を異にし適切でない場合や、単なる量刑不当の主張に留まる場合は、刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、原審の罪数判断に不相当な点があっても、直ちに刑訴法411条により判決を取り消すべきものとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪数…