日本国外で幇助行為をした者であっても、正犯が日本国内で実行行為をした場合には、刑法一条一項の「日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者」に当たる。
正犯の実行行為が日本国内で行われた場合における日本国外で幇助行為をした者と刑法一条一項
刑法1条1項,刑法62条1項
判旨
日本国外で幇助行為をした場合であっても、正犯が日本国内で実行行為をしたときは、刑法1条1項の「日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者」に当たると解すべきである。
問題の所在(論点)
日本国外で幇助行為が行われた場合において、正犯の実行行為が日本国内で行われたときに、日本刑法の適用範囲(属地主義)を定めた刑法1条1項の「日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル」に該当するか。
規範
刑法1条1項にいう「日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者」とは、実行行為の一部または結果の全部もしくは一部が日本国内において発生した場合を含む(遍在説)。共犯についても同様に、正犯の実行行為が日本国内で行われたのであれば、従犯(幇助犯)の幇助行為自体が日本国外で行われたとしても、当該幇助行為は日本国内において行われたものと解される。
重要事実
被告人は、共犯者らと共謀し、日本国外から日本国内へ覚せい剤を密輸入する計画に加担した。被告人は日本国外(国外)において、覚せい剤を調達して実行正犯者に手渡し、正犯者が日本国内で覚せい剤を輸入するという実行行為を容易にすることで、これを幇助した。
事件番号: 昭和55(あ)515 / 裁判年月日: 昭和57年2月17日 / 結論: 棄却
一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。 二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。
あてはめ
本件では、正犯が日本国外から日本国内へと覚せい剤を輸入し、覚せい剤取締法違反および関税法違反の各実行行為を日本国内で行っている。被告人が日本国外で覚せい剤を調達・手交した幇助行為は、これら日本国内で行われた正犯の実行行為を容易にするものである。共犯の処罰は正犯の実行行為を介して惹起された法益侵害を基礎とするため、正犯の実行行為が国内で行われた以上、幇助行為が国外であっても「国内で罪を犯した」といえる。
結論
被告人の幇助行為には日本刑法が適用される。したがって、国外で幇助行為をした被告人に対し、覚せい剤取締法違反等の幇助罪を適用した原判決は正当である。
実務上の射程
共犯の処罰について、正犯行為または共犯行為のいずれか一部が国内で行われれば属地主義に基づき日本刑法が適用されることを確認した重要判例である。答案上は、刑法1条の適用を論じる際、共犯の因果的共犯論(正犯の行為を介した法益侵害)を背景に、正犯行為地を基準として国内犯の成立を認める論理として活用する。
事件番号: 平成13(あ)1267 / 裁判年月日: 平成15年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】麻薬特例法上の「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」とは、薬物犯罪の構成要件に該当する行為自体によって犯人が取得した財産を指す。共犯者から犯罪遂行のための経費として交付された航空券等は、犯罪行為の用に供するための財産であって、不法収益には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤密輸入の犯罪を…
事件番号: 平成4(あ)858 / 裁判年月日: 平成5年11月9日 / 結論: 棄却
平成二年法律第三三号による改正前の麻薬取締法六四条二項の「営利の目的」には、外国でジアセチルモルヒネ等の麻薬を売却して財産上の利益を得ることを目的とする場合も含まれる。
事件番号: 平成24(あ)167 / 裁判年月日: 平成25年4月16日 / 結論: 棄却
覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,被告人が,犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ることを依頼され,その中に覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながらこれを引き受けたという本件事実関係の下では,特段の事情がない限り,…
事件番号: 平成13(あ)275 / 裁判年月日: 平成13年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤取締法41条1項の覚せい剤輸入罪は、船舶により領海外から搬入する場合、領土への陸揚げの時点で既遂に達する。公海上で覚せい剤を受け取り、これを本邦領海内に搬入したのみでは、いまだ既遂には至らない。 第1 事案の概要:被告人らは、運行を支配している小型船舶を用いて、公海上で他の船舶から覚せい剤…