国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成11年法律第136号による改正前のもの)2条3項にいう「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」の意義
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成11年法律第136号による改正前のもの)2条3項
判旨
麻薬特例法上の「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」とは、薬物犯罪の構成要件に該当する行為自体によって犯人が取得した財産を指す。共犯者から犯罪遂行のための経費として交付された航空券等は、犯罪行為の用に供するための財産であって、不法収益には当たらない。
問題の所在(論点)
覚せい剤密輸入を遂行するために共犯者から交付された往復航空券が、改正前麻薬特例法2条3項の「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」として没収・追徴の対象となるか。また、混在した現金の中に含まれる報酬の扱いが問題となる。
規範
麻薬特例法2条3項にいう「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」とは、薬物犯罪の構成要件に該当する行為自体によって犯人が直接的に取得した財産をいう。一方で、犯罪遂行の過程で費消・使用されるものとして、共犯者から交付を受けた財産は、刑法19条1項2号の「犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物」に当たり得るにすぎず、「犯罪行為により得た財産」には当たらない。
重要事実
被告人は覚せい剤密輸入の犯罪を実行するため、共犯者から往復航空券の交付を受けた。また、犯罪行為の報酬として1万5000香港ドル(約20万円相当)を受け取り、他の所持金と混在させて保管していた。原審は、航空券については不法収益に当たらないとして追徴せず、現金については報酬分が含まれていると認めなかった。
あてはめ
事件番号: 平成13(あ)1683 / 裁判年月日: 平成15年4月11日 / 結論: 棄却
1 「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」(平成11年法律第136号による改正前のもの)2条3項にいう「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」とは,薬物犯罪の構成要件に該当する行為自体によって犯人が取得した財産をいう。 2 薬物犯罪を遂行す…
往復航空券について、これは薬物犯罪を遂行する過程で費消される性質のものであり、犯罪行為自体によって得られた利得ではない。したがって、「犯罪行為の用に供した物」として没収の対象になり得ても、不法収益としての追徴はできない。一方、現金については、被告人が受け取った報酬20万円が他の現金と混在していたとしても、その実質が報酬である以上、事実誤認としてその存在を認めるべきであった(ただし本件では別事件での没収確定により破棄は不要とされた)。
結論
共犯者から交付された航空券は「犯罪行為により得た財産」に当たらない。薬物犯罪の報酬として受け取った現金は、他人の現金と混在していても本来没収・追徴の対象となる。
実務上の射程
没収・追徴の対象となる「不法収益」の範囲を、構成要件該当行為から生じた直接的利得に限定する基準を示した。答案上、共犯者から提供された資金や物品が、犯罪の「報酬(対価)」なのか「経費(準備)」なのかを区別する際に、本判例の規範を引用して、条文上の定義を厳格に解釈する必要がある。
事件番号: 平成14(あ)827 / 裁判年月日: 平成15年10月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】麻薬特例法上の「薬物犯罪収益」とは、犯罪行為自体によって取得した財産を指し、犯罪遂行の過程で費消・使用するために共犯者から交付された財産はこれに含まれない。もっとも、犯罪遂行のために交付された現金や航空券のうち、残余分や未使用分については刑法19条1項2号の没収対象となり得る。 第1 事案の概要:…
事件番号: 平成13(あ)93 / 裁判年月日: 平成13年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤を船舶によって領海外から搬入する場合、覚せい剤取締法41条1項の覚せい剤輸入罪は、領土への陸揚げの時点で既遂に達する。 第1 事案の概要:被告人らは、自ら運行を支配する小型船舶を用い、公海上で他の船舶から覚せい剤を受け取った。その後、当該覚せい剤を保持したまま本邦領海内に搬入したものの、陸…
事件番号: 平成13(あ)275 / 裁判年月日: 平成13年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤取締法41条1項の覚せい剤輸入罪は、船舶により領海外から搬入する場合、領土への陸揚げの時点で既遂に達する。公海上で覚せい剤を受け取り、これを本邦領海内に搬入したのみでは、いまだ既遂には至らない。 第1 事案の概要:被告人らは、運行を支配している小型船舶を用いて、公海上で他の船舶から覚せい剤…
事件番号: 平成24(あ)167 / 裁判年月日: 平成25年4月16日 / 結論: 棄却
覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,被告人が,犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ることを依頼され,その中に覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながらこれを引き受けたという本件事実関係の下では,特段の事情がない限り,…