判旨
正犯が密輸出を企図していることを認識しながら、当該密輸出を容易にする物品の売買行為を行った場合、正犯の実行行為を容易ならしめたものとして、刑法62条1項の幇助犯が成立する。
問題の所在(論点)
正犯が犯罪を犯す意思であることを知りながら、通常の商取引(売買)として物品を提供した行為に、従犯(幇助犯)が成立するか、およびその際の犯意(故意)の成否が問題となる。
規範
実行行為以外の方法により、正犯の実行行為を容易にする物理的または心理的な援助を行う行為は、幇助にあたる。また、正犯が特定の犯罪を企図していることを察知しながら、その犯行を容易にするための行為を敢えて行った場合には、幇助の故意が認められる。
重要事実
被告人Dは、共犯者Bらが商品を密輸出する計画を立てていることを察知していた。それにもかかわらず、DはBらに対して、密輸出の対象となるハンカチーフを売却し、Bらによる当該商品の密輸出行為を容易ならしめた。Dは、自身の売却行為が密輸出に利用されることを認識しつつ、敢えて売買を行っていた。
あてはめ
DはBらがハンカチーフを密輸出する目的で購入しようとしていることを「察知」していた。この認識がありながら「敢えて」売却した行為は、Bらの密輸出という実行行為を物理的・客観的に容易にする援助行為に該当する。したがって、客観的な幇助行為が認められるとともに、正犯の犯行を容易にする認識と認容、すなわち幇助の故意(犯意)も十分に認められる。
結論
被告人Dは密輸出行為の幇助犯としての責任を免れない。したがって、幇助犯の成立を認めた原判決に証拠によらない認定や法の誤用という違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(れ)1946 / 裁判年月日: 昭和25年1月19日 / 結論: 棄却
一 原判決の認定した本件犯罪事實は、要するに、被告人A、同Bは、原審相被告人C、同D及び第一審相被告人Eと共謀の上相共に物資を石川縣a港から船積みして朝鮮に密輸出しようと企て、被告人Aにおいて、判示のごとく昭和二二年一一月中右目的に使用するため機帆船F丸を買い取り、その修理艤装を進め同年一二月中旬頃迄の間に燃料その他消…
いわゆる「中立的行為による幇助」の典型的事例。特定の犯罪に利用されることを具体的に認識(察知)しながら物品を提供した場合には、通常の商取引であっても幇助犯が成立することを示した。答案上は、幇助の客観的要素(容易性)と主観的要素(正犯の計画の認識)を分けて論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)285 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
しかし、貿易等臨時措置令第四條及び關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項は何れも輸出入しようとした行爲をを罰する旨を規定しているのであるから、原判示のように朝鮮向けの密航船を仕立てて、税關の兔許も受けず、その他法定の除外事由もないのに右密航船に指輪ライター等を多量に船積した第一審相被告人Aの所爲は前記兩勅令の規定…
事件番号: 昭和27(あ)6454 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実行の着手は、犯行を企図した意思が外部に現れた行為といえるか否かによって判断され、密輸出の予備行為を超え、客観的に密輸出に至る危険性が認められる行為があった場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、貨物を朝鮮へ密輸出することを企図し、互いに共謀した。被告人らは、密輸出の実現に向けて具…
事件番号: 昭和23(れ)450 / 裁判年月日: 昭和23年8月5日 / 結論: 棄却
一 刑訴應急措置法第一二條は、所定の書類の供述者又は、作成者を訊問する機會を被告人に與へなければ、證據とすることができないとしたに過ぎないものであるから、既にその供述者又は作成者を訊問する機會を被告人に與えた以上その書類を證據とすることを毫も妨ぐるものではない。 二 本件記録によれば被告人は、昭和二二年六月九日判事の勾…
事件番号: 昭和26(あ)2526 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
一 被告人が公判廷において知情の点を除いて幇助の事実を供述する等その防禦に実質的な不利益を及ぼす虞のない場合には、正犯の訴因の変更をさせないでこれを幇助に認定することができる。 二 物品の密輸入をしようとした貿易等臨時措置令違反の事実とその物品の関税の逋脱を図つた関税法違反の事実とは、その公訴事実を異にする。