しかし、貿易等臨時措置令第四條及び關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項は何れも輸出入しようとした行爲をを罰する旨を規定しているのであるから、原判示のように朝鮮向けの密航船を仕立てて、税關の兔許も受けず、その他法定の除外事由もないのに右密航船に指輪ライター等を多量に船積した第一審相被告人Aの所爲は前記兩勅令の規定にいわゆる「物品の輸出をしようとした」ものであることが明らかである。
貿易等臨時措置令及び關税法の罰則等の特例に關する勅令の規定にいわゆる「物品の輸出をしようとした」行爲に該る一場合
昭和21年勅令328號貿易等臨時措置令第4條,昭和21年勅令277號關税法の罰則等の特例に關する勅令第1條第2項
判旨
物品の輸出入を禁止・制限する法令において、密輸出のための船舶を仕立て、許可なく多量の物品を船積みした時点で「輸出をしようとした」ものと認められ、操縦者に当初から目的地まで運航する意思がなかったとしても、実行の着手が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
未遂罪(実行の着手)の成否に関し、操縦者に目的地まで運航する意思がなく、客観的に結果発生の可能性が低い場合に「物品の輸出をしようとした」といえるか。また、その行為を援助した者に幇助罪が成立するか。
規範
「物品の輸出をしようとした」という実行の着手は、客観的に密輸出の目的で船舶を準備し、法定の免状を受けることなく物品を船積みした段階で認められる。その際、後に操縦者の主観的意図や機材の故障といった事情により結果発生が不可能になったとしても、既に開始された実行の着手による犯罪の成立を妨げるものではない。
重要事実
第一審被告人Aは、朝鮮向けの密航船を仕立て、税関の免許を受けることなく指輪やライター等を多量に船積みした。しかし、当該船舶を操縦できる唯一の人物であったBには、当初から朝鮮まで運航する意思がなく、実際にも故障と称して途中から引き返した。被告人は、Aが物品を密輸出する情を知りながら、船舶の燃料代等の費用を交付し、密航船用油等の購入を容易にさせたとして、密輸出の幇助罪に問われた。
事件番号: 昭和24(れ)1946 / 裁判年月日: 昭和25年1月19日 / 結論: 棄却
一 原判決の認定した本件犯罪事實は、要するに、被告人A、同Bは、原審相被告人C、同D及び第一審相被告人Eと共謀の上相共に物資を石川縣a港から船積みして朝鮮に密輸出しようと企て、被告人Aにおいて、判示のごとく昭和二二年一一月中右目的に使用するため機帆船F丸を買い取り、その修理艤装を進め同年一二月中旬頃迄の間に燃料その他消…
あてはめ
本件では、Aが密航船を仕立て、無免許で多量の物品を船積みした事実に照らせば、その時点で「物品の輸出をしようとした」という実行の着手が認められる。操縦者Bに運航の意思がなかったことや、途中で引き返した事実は、結果的に密輸出が不能になったという事情に過ぎず、既に認められた実行の着手を否定する根拠にはならない。したがって、Aの正犯行為が認められる以上、これに資金を提供して容易にさせた被告人の行為は幇助罪を構成する。
結論
Aの行為には「物品の輸出をしようとした」実行の着手が認められるため、その情を知って資金援助を行った被告人には、密輸出未遂罪の幇助罪が成立する。
実務上の射程
不能犯と未遂(実行の着手)の区別が問題となる場面で、客観的な危険性の判断に際して、行為者の主観や外部的事情をどの程度考慮すべきかの指針となる。答案上では、密輸等の準備行為が高度に進展した段階で実行の着手を認め、事後的な不能事情を排斥する論法として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)1337 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正犯が密輸出を企図していることを認識しながら、当該密輸出を容易にする物品の売買行為を行った場合、正犯の実行行為を容易ならしめたものとして、刑法62条1項の幇助犯が成立する。 第1 事案の概要:被告人Dは、共犯者Bらが商品を密輸出する計画を立てていることを察知していた。それにもかかわらず、DはBらに…
事件番号: 昭和25(れ)1208 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
一 本件においてA丸が舞鶴港から福井縣三国港に向け出航する予定であつたことは所論のとおりであるが被告人等は右三国港から朝鮮向けの密航船があること及び同船に連絡する船が舞鶴港から出航することを聞知し此の機会を利して朝鮮えの物品の密輸出を企て判示物件をA丸に積込んだものであり原判決挙示の証拠によればその頃密航船が航行してい…
事件番号: 昭和25(あ)1953 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】密輸入された物品を海岸から近傍の小屋へ搬入し、陸揚げ自体に協力して密輸入を容易ならしめる行為は、事後従犯ではなく密輸入罪の幇助罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、密輸入された物件を、海岸において自己所有の浜小屋に搬入した。この行為は、密輸入された物品の陸揚げ作業そのものに直接協力する形で行…
事件番号: 昭和27(あ)6454 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実行の着手は、犯行を企図した意思が外部に現れた行為といえるか否かによって判断され、密輸出の予備行為を超え、客観的に密輸出に至る危険性が認められる行為があった場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、貨物を朝鮮へ密輸出することを企図し、互いに共謀した。被告人らは、密輸出の実現に向けて具…