判旨
法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
法律が具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任し、いわゆる「空白刑法」の形態をとることは、罪刑法定主義を定める憲法31条、39条、および政令への罰則委任を制限する憲法73条6号但書に違反しないか。
規範
憲法73条6号但書の規定に基づき、法律の委任がある場合には政令で罰則(犯罪構成要件および刑)を設けることは許容される。特に経済統制法規は、内容が複雑多岐で社会情勢に応じた迅速な対応が必要なため、法律で基本的規制を概括的に定め、具体的細目を政令に委任する規制方法は合理性を有する。
重要事実
被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のために居住者に対する支払等を行ったとして起訴された。同法は「政令で定める場合を除き」支払等をしてはならないと規定し、具体的な許可手続等は政令である外国為替管理令に委任していた。被告人側は、このような空白刑法的な委任は罪刑法定主義(憲法31条、39条)に違反すると主張した。
あてはめ
本件の外国為替及び外国貿易管理法27条1項3号は、禁止される行為の基本原則を自ら規定しつつ、例外的に許容される場合の細目を政令に委任している。経済法規は変動する社会実情への即応が必要であり、法律に詳細を詰め込むよりも、政令に委任して機動的な改正を可能にすることは必要かつ適当である。したがって、本件の委任は白紙委任ではなく、憲法上許容される範囲内の委任立法であるといえる。
結論
本件の委任規定およびそれに基づく政令の規定は、憲法31条、39条、73条6号但書に違反しない。したがって、上告を棄却する。
事件番号: 昭和37(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の委任に基づき政令で罰則(犯罪構成要件および刑)を設けることは憲法73条6号但書により許容される。また、不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項)に該当するかは、身柄拘束の経緯、事案の複雑性、自白の時期等を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は外国為替及び外国貿易管理法違反の罪に…
実務上の射程
空白刑法や委任立法の合憲性が問題となる答案において、特に経済法規などの専門的・技術的分野での広範な委任を正当化する際のリーディングケースとして活用できる。「必要性」と「不合理性の欠如」をキーワードに、委任の合憲性を論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和38(あ)1801 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
一 外国為替及び外国貿易管理法第七三条は、事業主たる法人の代表者でない従業者の違反行為につき、当該法人に右行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れないとする法意である…
事件番号: 昭和31(あ)338 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令(昭和二七年政令第一二七号)第四条の性格は、外国為替及び外国貿易管理法第二一条の委任命令に外ならず、右政令の効力は安全保障条約ないし行政協定の効力如何によつて左右されるものと解すべきではない。
事件番号: 昭和37(あ)624 / 裁判年月日: 昭和40年1月20日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第三号は憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和45(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国為替及び外国貿易管理法による支払等の制限およびこれに違反した者への刑罰規定は、公共の福祉のために必要な制限として、憲法22条1項および29条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の外国為替及び外国貿易管理法(外為法)27条1項3号が禁ずる無許可の支払等を行い、同法70条7号に基づ…