判旨
法律の委任に基づき政令で罰則(犯罪構成要件および刑)を設けることは憲法73条6号但書により許容される。また、不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項)に該当するかは、身柄拘束の経緯、事案の複雑性、自白の時期等を総合して判断すべきである。
問題の所在(論点)
1. 法律が犯罪構成要件の一部を政令に委任することは委任立法の限界(憲法31条、73条6号)に反しないか。 2. 約3か月半にわたる身柄拘束中またはその後の自白は「不当に長く拘禁された後の自白」(憲法38条2項)として証拠能力が否定されるか。
規範
1. 白地刑罰法規:法律に基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の一部を政令等に委任することは、内容が複雑多岐で変動の激しい社会実情に即応する必要がある場合、不合理とはいえず、憲法73条6号但書に基づき許容される。ただし、政令の内容が相当具体的に定められている必要がある。 2. 拘禁後の自白:憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」にあたるかは、身柄拘束の経緯、自白の時期、事案の性質(複雑性等)を総合して判断する。
重要事実
被告人は外国為替及び外国貿易管理法違反の罪に問われた。被告人は昭和34年7月8日に逮捕・勾留された後、一旦釈放されたが同日再逮捕され、同年10月14日に保釈されるまで通算して約3か月半身柄を拘束された。自白のうち一部は2回目の勾留中(9月)になされ、残りは保釈釈放後(翌年6月)になされた。弁護人は、罰則を政令に委任する法律規定の違憲性(憲法31条、73条6号違反)および不当に長い拘禁後の自白の証拠能力(憲法38条2項違反)を主張して上告した。
あてはめ
1. 委任の合憲性:本法のような経済統制法規は、変動する社会情勢への即応が必要であり、法律で基本的な規制を概括的に定め、詳細を政令(外国為替管理令)に委任することは合理的である。同政令は構成要件を相当具体的に定めており、違憲とはいえない。 2. 自白の任意性:被告人は逮捕・勾留を経て保釈されるまで一定期間拘束されたが、事案が相当複雑であることに加え、自白の一部は保釈後の任意捜査段階でなされている。これらの諸事情を総合すれば、本件の自白が不当に長い拘禁の結果なされたものとはいえず、任意性を疑うべき証跡もない。
結論
1. 犯罪構成要件を政令に委任することは憲法73条6号但書により許容され、合憲である。 2. 本件自白は不当に長い拘禁後の自白にはあたらず、証拠能力を有する。
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
実務上の射程
白地刑罰法規の合憲性判断においては、行政法規(特に経済法規)の専門性・機動性の必要性を肯定する。自白については、単に拘禁期間の長さのみならず、事件の複雑性や自白が釈放後になされた事実等の「諸般の事情」を総合考慮する枠組みを提示しており、刑事訴訟法上の自白排除法則の適用場面で活用できる。
事件番号: 昭和38(あ)1801 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
一 外国為替及び外国貿易管理法第七三条は、事業主たる法人の代表者でない従業者の違反行為につき、当該法人に右行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れないとする法意である…
事件番号: 昭和31(あ)338 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令(昭和二七年政令第一二七号)第四条の性格は、外国為替及び外国貿易管理法第二一条の委任命令に外ならず、右政令の効力は安全保障条約ないし行政協定の効力如何によつて左右されるものと解すべきではない。
事件番号: 昭和45(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国為替及び外国貿易管理法による支払等の制限およびこれに違反した者への刑罰規定は、公共の福祉のために必要な制限として、憲法22条1項および29条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の外国為替及び外国貿易管理法(外為法)27条1項3号が禁ずる無許可の支払等を行い、同法70条7号に基づ…
事件番号: 昭和31(あ)4601 / 裁判年月日: 昭和32年10月11日 / 結論: 棄却
一 外国にある弗預金を取得した代償として本邦の居住者に対して基準外国為替相場を超える支払をした場合は、外国為替及び外国貿易管理法第二八条と同法第七条第六項違反の罪が成立し、両者は観念的競合になる。 二 国外に去ることが明らかな参考人の検察官面前調書であつても証拠能力を失うものではない。