判旨
外国為替及び外国貿易管理法による支払等の制限およびこれに違反した者への刑罰規定は、公共の福祉のために必要な制限として、憲法22条1項および29条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
外為法27条1項3号(支払等の制限)および70条7号(罰則)が、憲法22条1項の保障する経済的自由や、29条1項の保障する財産権を侵害し、違憲ではないか。
規範
経済的自由権(憲法22条1項、29条1項)に対する制限が許容されるか否かは、その制限が「公共の福祉」のために必要かつ合理的な範囲内であるかによって判断される。特に国際的な経済秩序や通貨の安定を図るための規制は、広範な立法裁量が認められる性質のものである。
重要事実
被告人が、当時の外国為替及び外国貿易管理法(外為法)27条1項3号が禁ずる無許可の支払等を行い、同法70条7号に基づき処罰された事案。弁護人は、これら外為法の制限規定および罰則規定が、憲法22条1項(居住・移転・職業選択の自由)および29条1項(財産権)を侵害する違憲なものであると主張して上告した。
あてはめ
判旨は、先行する大法廷判例(最判昭40.1.20)を引用するのみで詳細な論証を省略しているが、当該大法廷判例の趣旨に照らせば、国際収支の均衡や通貨の安定、ひいては国民経済の健全な発展を期するという目的のために、外国為替等の取引に一定の制限を課し、これに罰則を付すことは「公共の福祉」に合致する。したがって、本件外為法の規定は、憲法22条1項および29条1項の範囲内にあると解される。
結論
外為法27条1項3号、70条7号の各規定は、憲法22条1項および29条1項に違反しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和37(あ)624 / 裁判年月日: 昭和40年1月20日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第三号は憲法第二九条に違反しない。
経済的自由権の制限に関する合憲性判定において、国際的な経済活動の規制(いわゆる積極目的ないし政策的規制の側面)については、先行する大法廷判決の枠組みが維持されていることを確認する事案。答案上は、経済活動の自由に対する「公共の福祉」による制約を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
事件番号: 昭和37(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の委任に基づき政令で罰則(犯罪構成要件および刑)を設けることは憲法73条6号但書により許容される。また、不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項)に該当するかは、身柄拘束の経緯、事案の複雑性、自白の時期等を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は外国為替及び外国貿易管理法違反の罪に…
事件番号: 昭和49(あ)2673 / 裁判年月日: 昭和50年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】輸出貿易管理令に基づく輸出承認制度による制限は、公共の福祉のために必要な合理的制限として憲法22条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、通商産業大臣(当時)の承認を受けることなく、輸出貿易管理令1条1項1号に指定された貨物を輸出した。この行為が、外国為替及び外国貿易管理法(当時)違反(…
事件番号: 昭和39(あ)1295 / 裁判年月日: 昭和40年11月26日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法二七条第一項第三号違反の罪と同法第四八条第一項に基づく命令に違反する罪とは、牽連犯ではない。