外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第三号は憲法第二九条に違反しない。
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第三号の合憲性。
外国為替及び外国貿易管理法27条1項3号,外国為替及び外国貿易管理法70条7号(旧8号),憲法29条
判旨
外国為替及び外国貿易管理法による支払規制は、国際収支の均衡や通貨の安定等の目的を達成するために必要な制限であり、公共の福祉に適合する合理的なものとして憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
外国為替及び外国貿易管理法による、居住者から非居住者への円貨支払に対する許可制が、憲法29条(財産権)に反し許されないのではないか。
規範
財産権の行使に対する制限が憲法29条2項にいう「公共の福祉」に適合するか否かは、制限の目的が正当であり、かつ、その制限が目的達成のために必要かつ合理的な範囲内にあるかによって判断される。
重要事実
被告人は、メリヤス糸を輸出した際、実際の売買代金を超過した金額のドル建て信用状を受け取り、その超過分を円貨で国内の非居住者に支払った。これが、当時の外国為替及び外国貿易管理法27条1項3号(許可のない居住者から非居住者への支払禁止)に抵触するとして起訴された。被告人側は、外貨獲得に寄与する支払を禁ずることは公共の福祉による制限を逸脱し憲法29条に違反すると主張した。
事件番号: 昭和45(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国為替及び外国貿易管理法による支払等の制限およびこれに違反した者への刑罰規定は、公共の福祉のために必要な制限として、憲法22条1項および29条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の外国為替及び外国貿易管理法(外為法)27条1項3号が禁ずる無許可の支払等を行い、同法70条7号に基づ…
あてはめ
同法の目的は、単なる外貨流入の促進だけでなく、国際収支の均衡、通貨の安定、外貨資金の有効利用等を通じた国民経済の発展にある。本件のような預かり円の支払を自由に認めれば、①円資金が安価に取引され公定相場が乱される、②滞在者が持参する外貨が減少し間接的に外貨流入を妨げる、③チェック・プライス制度を潜脱する輸出契約を助長するといった実害の危険がある。したがって、かかる支払を許可制により制限することは、国民経済の安定という正当な目的のために必要かつ合理的な制限といえる。
結論
本件規定による制限は、公共の福祉に適合する合理的なものである。したがって、憲法29条に違反しない。
実務上の射程
経済的自由(特に財産権)に対する公法的規制の合憲性判断において、目的の正当性と手段の合理性・必要性を審査する枠組みを示す。いわゆる「合理的な期間・手段による制限」が許容される経済規制の典型例として、答案では規制目的の公共性と実害の具体的危険性を指摘する際に引用できる。
事件番号: 昭和33(あ)1620 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
本邦人以外の居住者が、自己が外国において有する外国銀行預金にもとづいて、本邦内で小切手を振出した場合も、外国為替等集中規則第三条第一項にいう対外支払手段の「取得」にあたる。
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
事件番号: 昭和36(あ)2543 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七第二項第一号は、非居住者が同号記載の費用を支弁するため本邦通過で支払う場合を規定したものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(あ)2728 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
非居住者に対して、いわゆる「預り円」を支払うことは、外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第二号前段の規制の対象となる。