本邦人以外の居住者が、自己が外国において有する外国銀行預金にもとづいて、本邦内で小切手を振出した場合も、外国為替等集中規則第三条第一項にいう対外支払手段の「取得」にあたる。
本邦人以外の居住者が、自己が外国において有する外国銀行預金にもとづいて、本邦内で小切手を振出した場合と外国為替等集中規則第三条第一項にいう対外支払手段の「取得」。
外国為替及び外国貿易管理法21条,外国為替及び外国貿易管理法22条,外国為替及び外国貿易管理法25条,外国為替及び外国貿易管理法70条22号(昭和33年法律156号による改正前のもの),外国為替管理令3条,外国為替等集中規則3条
判旨
本邦内において振り出される対外支払手段は、その原因関係が個人的な送金目的等であっても、小切手の流通性ゆえに管理目的に反する外貨交換等に利用される可能性がある。したがって、これらを外国為替及び外国貿易管理法等の規制対象とすることは、憲法29条(財産権)に違反しない。
問題の所在(論点)
本邦内において個人的な目的で振り出される外貨小切手の規制が、憲法29条が保障する財産権の不当な侵害に当たり違憲となるか。また、日米通商航海条約12条に違反するか。
規範
外国為替管理制度における規制の合憲性は、当該規制が国際収支の均衡や通貨の安定という公共の利益に資するか否かにより判断される。対外支払手段(小切手等)は本質的に流通性を有するため、個別の振出原因が国際収支に直接影響しない個人的なものであっても、それが流用されることで管理目的に反する事態が生じ得る。したがって、本邦内で行われる対外支払手段の振出等を一律に管理対象とすることは、合理的で必要な制限として合憲である。
重要事実
被告人は、父母兄弟や会社関係者等への送金を目的として、本邦内において外貨小切手を振り出した。弁護人は、外国人が外国で取得した外貨預金に関する限り、これをどのように処理しても日本の国際収支の均衡を害さず資本逃避とも無関係であると主張。当該行為を処罰する外国為替管理法令は、憲法29条および日米通商航海条約12条に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(あ)624 / 裁判年月日: 昭和40年1月20日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第三号は憲法第二九条に違反しない。
あてはめ
小切手は元来流通性を特性とするため、振出の原因関係とは独立して流通し得る。被告人が主張するような個人的な送金目的であったとしても、その小切手が管理目的に反して外貨と円貨の交換(闇ドル取引等)に使用されるなどの流用を完全に防止することは困難である。本邦内で振り出される限り、これに対する管理は外国為替管理と無関係とは断じられない。したがって、流通による悪用の危険性という性質を重視し、一律に管理の対象とすることは公共の福祉に基づく合理的な制限といえる。
結論
本件外国為替管理法令等の規制は、憲法29条および日米通商航海条約12条のいずれにも違反しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
財産権に対する公共の福祉による制限が、対象物の性質(本件では小切手の流通性)や管理の必要性から合理的に正当化されることを示した判例である。経済的自由に対する規制の合憲性判定において、個別の意図にかかわらず、客観的な流用の危険性を根拠に広範な規制を認める枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
事件番号: 昭和30(あ)402 / 裁判年月日: 昭和35年6月24日 / 結論: 棄却
一 米国軍票は、外国為替及び外国貿易管理法第六条第一項第八号にいう「対外支払手段」に該当する。 二 軍票の日本銀行に対する寄託業務を定めている昭和二七年政令第一二七号日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令第四条第二項の規程は、単に対外支払手段等の…
事件番号: 昭和39(あ)2728 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
非居住者に対して、いわゆる「預り円」を支払うことは、外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第二号前段の規制の対象となる。
事件番号: 昭和31(あ)338 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令(昭和二七年政令第一二七号)第四条の性格は、外国為替及び外国貿易管理法第二一条の委任命令に外ならず、右政令の効力は安全保障条約ないし行政協定の効力如何によつて左右されるものと解すべきではない。