関税法第一一一条第一項に違反して輸出された犯罪貨物に関し、同法第一一八条第二項に定める「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、その犯罪が行なわれた当時における犯罪貨物の国内卸売価格を指し、右価格中には内国消費税および通常の卸売取引における適正利潤が含まれるものと解するのを相当とする。
輸出貨物につき関税法第一一八条第二項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」の意義
関税法11条2項
判旨
関税法118条2項に基づく追徴金について、共同正犯者の個々に対し犯罪貨物の全額を命じ得ること、およびその算定の基礎となる価格は内国消費税や適正利潤を含む国内卸売価格であることを示した。
問題の所在(論点)
1. 関税法118条2項に基づく追徴金の算定基準となる「犯罪が行なわれた時の価格」の意義。 2. 共同正犯の一人に対し、犯罪貨物の全額に相当する追徴を命じることの可否。
規範
1. 関税法118条2項の「犯罪が行なわれた時の価格」とは、当該犯罪が行われた当時における犯罪貨物の国内卸売価格を指し、これには内国消費税および通常の卸売取引における適正利潤が含まれる。 2. 共同正犯の場合、刑罰の個別性の原則にかかわらず、各共同正犯者は当該犯罪貨物の全額について追徴を命じられる。
重要事実
被告人は、関税法111条1項に違反して犯罪貨物を輸出しようとしたが、当該貨物の没収が不能(または不相当)であったため、同法118条2項に基づきその価格相当額の追徴を命じられた。被告人は共同正犯の一人に過ぎなかったが、原審は貨物全額に相当する金額の追徴を命じ、その算定にあたって国内卸売価格を採用し、物品税(内国消費税)相当額を算入した。被告人は、これらが憲法29条(財産権)等に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和45(あ)761 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 棄却
一 関税法(昭和二九年法律第六一号)一一八条二項により犯人から追徴すべき金額算定の基準たる価格、すなわち同項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、輸入貨物については、その犯罪が行なわれた当時における国内卸売価格(関税および内国消費税込)をいう。 二 昭和四一年法律第三六…
あてはめ
1. 追徴は没収に代わる性質を有するものであるから、没収すべき貨物の客観的な経済的価値を基準とすべきである。本件貨物の流通実態に照らせば、国内卸売価格には内国消費税や適正利潤が含まれるのが通常であり、これを基準とすることは適正かつ明確である。 2. 関税法118条2項の規定は、犯罪による利得の剥奪のみならず、制裁的機能をも有する。したがって、共同正犯者の個々に対し、その関与の程度にかかわらず、犯罪貨物の全額に相当する金額を追徴することは、同条の解釈として正当であり、憲法29条にも違反しない。
結論
国内卸売価格(消費税等込)を基準とし、共同正犯者の一人に対して全額の追徴を命じた原判決は正当であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
関税法における追徴の性質(実質的な制裁性)と範囲を確定させた。司法試験においては、刑法上の追徴の原則(利得剥奪)と、関税法等の行政刑法における追徴(制裁的性質・全額追徴)の差異を意識する際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和51(あ)1045 / 裁判年月日: 昭和52年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項(昭和42年改正前)に基づき追徴を科される「犯人」とは、没収の対象となる犯罪貨物等の所有者に限られず、当該犯罪に関与したすべての犯人を指す。この解釈は憲法29条1項の財産権の保障に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和42年改正前の関税法違反(密輸入等)の罪に問われた。原…
事件番号: 昭和32(あ)935 / 裁判年月日: 昭和35年2月27日 / 結論: 棄却
関税法(昭和二九年法律第六一号)第一一八条第二項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、輸入貨物についてはその犯罪が行われた当時における国内卸売価格(関税および国内消費税込)をいう。
事件番号: 昭和38(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条1項及び2項に規定する「犯人」とは、密輸品の所有者に限定されず、犯罪の実行行為者、教唆者、幇助者の全員を指す。また、没収不能の場合の追徴は、犯人が連帯してその価額を納付すべき義務を負うと解される。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bらは、関税法違反(密輸)の罪に問われた。原審は、…