控訴趣意書差出最終日が徒過したことを理由に弁護人がいない状態で控訴棄却の決定をした控訴審の措置が是認された事例
刑訴法289条,刑訴法386条1項1号,刑訴法404条
判旨
必要的弁護事件において、私選弁護人が期間延長が認められないことを理由に控訴趣意書を提出せず辞任した場合、弁護人が不在であっても期間徒過による控訴棄却は認められる。
問題の所在(論点)
刑訴法289条1項の必要的弁護事件において、私選弁護人が趣意書を提出せずに辞任し弁護人が不在となった状態で、裁判所が期間徒過を理由に控訴棄却(386条1項1号)を行うことは、被告人の弁護人依頼権(憲法37条3項)や効果的な弁護を受ける権利を侵害し、違法とならないか。
規範
控訴審において、私選弁護人が期間延長の不許可を不服として控訴趣意書を提出せずに辞任した場合、被告人に弁護人が付いていない状態であっても、特段の事情がない限り、控訴趣意書差出最終日の徒過を理由とする控訴棄却決定(刑訴法386条1項1号)は適法である。
重要事実
殺人等で懲役11年の判決を受けた被告人が控訴。第1審の記録は2冊で、当初の私選弁護人3名が辞任後、新たに金岡弁護士が選任された。控訴裁判所は趣意書差出期限を当初の1月7日から3月23日まで延長し、さらに職権で3月30日まで延長したが、金岡弁護士が求めた4月末までの再延長申請を却下した。これに対し同弁護士は「責任を持って完成できない」として、期限前の3月26日に趣意書を提出せず辞任。裁判所は期限翌日の3月31日に控訴棄却決定を下した。
あてはめ
本件では、裁判所は当初の期限から既に2か月以上の延長を認めており、記録の分量(2冊)に照らしても、3月30日という期限は準備に不足とはいえない。また、弁護士の事務所移籍等の個人的事情による再延長の必要性も乏しい。弁護人が自ら「防御を全うできない」として趣意書を提出せず戦略的に辞任したことは、弁護人の責めに帰すべき事由といえる。このような状況下で、裁判所があえて国選弁護人を選任して期間を再設定する義務までは認められず、被告人の弁護人選任権が不当に侵害されたとはいえない。
事件番号: 昭和43(し)82 / 裁判年月日: 昭和44年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件であっても、裁判所が被告人に弁護人を選任する機会を与え、その行使を妨げていないのであれば、控訴趣意書の差出最終日までに弁護人が選任されなかったとしても憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:必要的弁護事件において、控訴審の控訴趣意書提出期限までに弁護人が選任されなかった事案。…
結論
弁護人が不在の状態であっても、期限徒過を理由とする控訴棄却決定は相当であり、刑訴法386条1項1号に違反しない。
実務上の射程
必要的弁護事件であっても、私選弁護人の辞任が「期限延長の強要」を目的とするような場合には、弁護人不在のまま控訴棄却が可能であることを示した。実務上は、裁判所による期限設定の合理性と、弁護人側の辞任に至る経緯を詳細に検討して、手続きの正当性を判断する際の指針となる。
事件番号: 昭和47(し)43 / 裁判年月日: 昭和47年9月26日 / 結論: その他
いわゆる必要的弁護事件につき被告人が控訴した場合において、刑訴規則二五〇条により控訴の審判に準用される同規則一七八条三項の規定に違背して被告人に弁護人がないままであるときは、所定の期間内に控訴趣意書を差し出さないことに基づき刑訴法三八六条一項一号により決定で右控訴を棄却することは許されない。
事件番号: 平成5(し)170 / 裁判年月日: 平成6年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が選任した弁護人に十分な時間がありながら控訴趣意書を提出せず、期限当日に辞任した場合には、控訴棄却決定は有効であり、弁護権の侵害や手続の不備には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が自ら選任した私選弁護人が存在していた事案である。当該弁護人は、控訴趣意書の提出期限までに提出準備のための十分…
事件番号: 昭和25(し)27 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
強制弁護の事件につき、裁判所が被告人に対し、弁護人を選任することができること、貧困その他の事由によつて弁護人を選任することができないときは、弁護人の選任を請求することができるとの記載のある弁護人選任に関する通知を出したのに対し、被告人から自分の方で弁護人甲を選任する旨を回答があつた場合には、控訴裁判所は被告人に対し、控…
事件番号: 平成15(し)360 / 裁判年月日: 平成16年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項は、被告人に対し、公訴提起の当初から判決確定に至るまでの間、間断なく弁護人が付されることまで保障したものではない。したがって、控訴取下げ時に弁護人が付されていなくとも、同条項に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が控訴を取り下げた際、弁護人が付されていなかった。これに対し…