被告人が控訴を取り下げる際に弁護人が付されていないことと憲法37条3項
憲法37条3項,刑訴法359条
判旨
憲法37条3項は、被告人に対し、公訴提起の当初から判決確定に至るまでの間、間断なく弁護人が付されることまで保障したものではない。したがって、控訴取下げ時に弁護人が付されていなくとも、同条項に違反するものではない。
問題の所在(論点)
被告人が控訴を取り下げる際に弁護人が付されていないことが、憲法37条3項の保障する弁護人依頼権に違反するか。
規範
憲法37条3項は、被告人に対し、公訴提起の当初から判決確定に至るまでの間、一切の空白期間なく常に弁護人が付されていること(間断なき弁護人依頼権)を保障するものではない。よって、訴訟手続の特定の場面において弁護人が付されていないことのみをもって直ちに違憲とはならない。
重要事実
被告人が控訴を取り下げた際、弁護人が付されていなかった。これに対し、被告人側は、公訴提起から判決確定まで間断なく弁護人が付されるべきであり、弁護人がいない状態での控訴取下げは憲法37条3項に違反する旨を主張して抗告した。
あてはめ
憲法37条3項の趣旨に照らせば、同条項は判決確定まで間断なく弁護人が付されることを保障するものではない。本件における控訴の取下げという手続において、仮に弁護人が付されていなかったとしても、その一事をもって憲法が保障する弁護人依頼権を侵害したものとは評価されない。過去の大法廷判決の趣旨に徴しても、本件の状況が違憲であるとは認められない。
事件番号: 平成9(し)40 / 裁判年月日: 平成9年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の権利を保護すべき弁護人の活動に欠ける点がない限り、憲法37条3項が保障する弁護人の援助を受ける権利の侵害には当たらない。 第1 事案の概要:申立人(被告人)側が、原審における弁護人の弁護活動に不備があったとして、憲法37条3項違反を理由に特別抗告を申し立てた事案である。具体的な弁護活動の内…
結論
被告人が控訴を取り下げる際に弁護人が付されていなくとも、憲法37条3項に違反しない。
実務上の射程
憲法37条3項の保障範囲(時間的連続性)を否定した判例である。答案上は、弁護人が不在のまま行われた訴訟行為の有効性や、必要的弁護事件における弁護人不在期間の適法性を論じる際の準拠枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成21(し)205 / 裁判年月日: 平成21年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件において、私選弁護人が期間延長が認められないことを理由に控訴趣意書を提出せず辞任した場合、弁護人が不在であっても期間徒過による控訴棄却は認められる。 第1 事案の概要:殺人等で懲役11年の判決を受けた被告人が控訴。第1審の記録は2冊で、当初の私選弁護人3名が辞任後、新たに金岡弁護士が…
事件番号: 昭和43(し)82 / 裁判年月日: 昭和44年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件であっても、裁判所が被告人に弁護人を選任する機会を与え、その行使を妨げていないのであれば、控訴趣意書の差出最終日までに弁護人が選任されなかったとしても憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:必要的弁護事件において、控訴審の控訴趣意書提出期限までに弁護人が選任されなかった事案。…
事件番号: 昭和47(し)16 / 裁判年月日: 昭和47年4月3日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人を依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足りるものであること、同項後段の規定は、被告人が弁護人を依頼することができないときは、国に対し弁護人の選任を請求する権利があることを認めたものであつて国はかかる請求がなされたと…
事件番号: 昭和26(し)5 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件でない場合において、裁判所が被告人に対し職権で弁論を放棄するか否かの催告を行わずに控訴棄却の決定をしても、直ちに憲法32条に反する違法とはならない。 第1 事案の概要:必要的弁護事件ではない被告事件について、控訴裁判所(大阪高裁)が、被告人に対し職権で弁論を放棄するか否かの催告をする…