憲法三七条三項前段所定の弁護人を依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足りるものであること、同項後段の規定は、被告人が弁護人を依頼することができないときは、国に対し弁護人の選任を請求する権利があることを認めたものであつて国はかかる請求がなされたとき弁護人を附すれば足りるものであることは、いずれも当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第六八七号同年一一月二日大法廷判決、刑集三巻一一号一七三七頁、昭和二四年(れ)等八二四号同二六年一月三一日大法廷判決、裁判集三九号九四七頁昭和二五年(あ)第二一五三号同二八年四月一日大法廷判決刑集七巻四号七一三頁)とするところである。
憲法三七条三項の法意
憲法37条3項
判旨
憲法37条3項前段の弁護人依頼権は、被告人が自ら行使すべき権利であり、裁判所はその行使の機会を与え、妨げなければ足りる。また、同項後段の国選弁護人選任請求権は、被告人が弁護人を依頼できない場合に請求権を認めるもので、国は請求があった際に弁護人を付せば足りる。
問題の所在(論点)
被告人に弁護人が付されていない場合に、裁判所や国が積極的に弁護人を付与すべき義務を負うのか、すなわち憲法37条3項の保障の範囲が問題となる。
規範
憲法37条3項前段の規定は、被告人が自ら弁護人を依頼する権利を保障したものであり、裁判所は被告人に対してその権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足りる。また、同項後段の規定は、被告人が自力で弁護人を依頼できない場合に、国に対して弁護人の選任を請求する権利を認めたものであり、国はかかる請求がなされたときに弁護人を付せば、憲法上の義務を果たすものと解される。
重要事実
抗告人は、刑事訴訟の手続において弁護人が付されなかった点等につき、憲法37条3項(被告人の弁護人依頼権・国選弁護人選任請求権)に違反する旨を主張して抗告した。具体的な事件の内容や、被告人が実際に弁護人の選任を請求したか等の詳細な事実関係については、判決文からは不明である。
事件番号: 昭和43(し)82 / 裁判年月日: 昭和44年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件であっても、裁判所が被告人に弁護人を選任する機会を与え、その行使を妨げていないのであれば、控訴趣意書の差出最終日までに弁護人が選任されなかったとしても憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:必要的弁護事件において、控訴審の控訴趣意書提出期限までに弁護人が選任されなかった事案。…
あてはめ
憲法37条3項前段に基づき、被告人には自ら弁護人を選任する機会が保障されている。本件において、裁判所がその機会を不当に制限したり、行使を妨げたりした事実は認められない。また、同条項後段は、被告人が自力で依頼できない場合に「請求」することを前提として国選弁護人を付与することを定めている。本件において、被告人からの適法な選任請求があったにもかかわらず国がこれを拒絶したといった事情は認められず、単に弁護人が付されていないという事実のみをもって憲法違反とすることはできない。
結論
被告人に弁護人を選任する機会を与え、請求に応じて選任を行っている限り、憲法37条3項に違反しない。したがって、本件抗告は理由がなく、棄却される。
実務上の射程
弁護人依頼権の本質が「被告人の能動的な権利行使」にあることを示す。答案上、国選弁護人が付されなかったことの違憲性を論じる際、被告人側からの明示的な請求や資力要件等の欠如を指摘し、裁判所の消極的義務(妨げないこと)の充足を確認する文脈で使用する。ただし、必要的弁護事件(刑訴法289条)等、法律上の必要的付随事由がある場合は別途検討が必要となる点に注意を要する。
事件番号: 昭和25(し)27 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
強制弁護の事件につき、裁判所が被告人に対し、弁護人を選任することができること、貧困その他の事由によつて弁護人を選任することができないときは、弁護人の選任を請求することができるとの記載のある弁護人選任に関する通知を出したのに対し、被告人から自分の方で弁護人甲を選任する旨を回答があつた場合には、控訴裁判所は被告人に対し、控…
事件番号: 昭和32(し)44 / 裁判年月日: 昭和32年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が私選弁護人を選任する旨を回答しながら、その後弁護人を選任せず、控訴趣意書の提出期間を徒過した場合には、裁判所が職権で弁護人を選任しなくとも憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は有罪判決に対し控訴を申し立てた。原審裁判長は、控訴趣意書提出最終日および公判期日を指定し、弁護人…
事件番号: 昭和25(し)23 / 裁判年月日: 昭和25年6月26日 / 結論: 棄却
抗告人は原上告審において適法な公判期日の通知を受けて迅速な公開裁判を受ける權利と機會を與えられ乍ら決定の期間迄に上告趣意書を提出せず自らその權利の行使を怠つたものである。そうして記録を精査しても原裁判所が抗告人の上告趣意書の提出を妨げた事跡は認められないのであるから原裁判所が上告趣意書不提出の故を以て抗告人の原上告申立…
事件番号: 昭和28(し)56 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るも…