判旨
必要的弁護事件でない場合において、裁判所が被告人に対し職権で弁論を放棄するか否かの催告を行わずに控訴棄却の決定をしても、直ちに憲法32条に反する違法とはならない。
問題の所在(論点)
必要的弁護事件ではない事案において、裁判所が職権で弁論放棄の催告をせずに控訴棄却の決定を行うことは、憲法32条(裁判を受ける権利)または刑事訴訟法に違反するか。
規範
刑事訴訟法上の必要的弁護事件(同法289条1項)に該当しない事案においては、裁判所が被告人に対して弁論の機会を確保するための特段の催告(弁論放棄の成否の確認等)を行うことは、公判手続上の義務とは解されない。
重要事実
必要的弁護事件ではない被告事件について、控訴裁判所(大阪高裁)が、被告人に対し職権で弁論を放棄するか否かの催告をすることなく、直ちに控訴を棄却する決定を行った。これに対し、申立人は、裁判を受ける権利(憲法32条)を侵害する違法があるとして特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件は、法律上弁護人が必ずしも必要とされない事案である。このような場合、裁判所が自ら進んで被告人に対し「弁論を放棄するか否か」を問い直すなどの配慮を義務付ける明文の規定はない。したがって、裁判所がそのような催告を行わずに控訴棄却の判断を下したとしても、それは単なる訴訟手続の適否の問題にすぎず、憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」を本質的に侵害するものとはいえない。
結論
本件のような必要的弁護事件でない場合に、職権による弁論放棄の催告を経ずに控訴棄却をしても違憲・違法ではない。
実務上の射程
刑事手続における裁判所の職権義務の範囲を画する際に参照される。特に、必要的弁護事件以外の事案における被告人の防御権行使の機会について、裁判所にどの程度の積極的配慮が求められるかという文脈で、その限界を示すものといえる。
事件番号: 昭和43(し)82 / 裁判年月日: 昭和44年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件であっても、裁判所が被告人に弁護人を選任する機会を与え、その行使を妨げていないのであれば、控訴趣意書の差出最終日までに弁護人が選任されなかったとしても憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:必要的弁護事件において、控訴審の控訴趣意書提出期限までに弁護人が選任されなかった事案。…
事件番号: 昭和46(し)23 / 裁判年月日: 昭和46年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書差出期間の最終日の通知が適法になされている場合、裁判を受ける権利を保障した憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:本件における申立人は、控訴趣意書の差出期間の最終日の指定について、昭和46年1月24日に通知を受けた。申立人は、この指定や手続が憲法32条に違反すると主張して特別抗告を申…
事件番号: 昭和25(し)27 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
強制弁護の事件につき、裁判所が被告人に対し、弁護人を選任することができること、貧困その他の事由によつて弁護人を選任することができないときは、弁護人の選任を請求することができるとの記載のある弁護人選任に関する通知を出したのに対し、被告人から自分の方で弁護人甲を選任する旨を回答があつた場合には、控訴裁判所は被告人に対し、控…
事件番号: 昭和32(し)44 / 裁判年月日: 昭和32年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が私選弁護人を選任する旨を回答しながら、その後弁護人を選任せず、控訴趣意書の提出期間を徒過した場合には、裁判所が職権で弁護人を選任しなくとも憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は有罪判決に対し控訴を申し立てた。原審裁判長は、控訴趣意書提出最終日および公判期日を指定し、弁護人…
事件番号: 昭和47(し)16 / 裁判年月日: 昭和47年4月3日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人を依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足りるものであること、同項後段の規定は、被告人が弁護人を依頼することができないときは、国に対し弁護人の選任を請求する権利があることを認めたものであつて国はかかる請求がなされたと…