殺人に係る被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定がされた事例 被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることと憲法32条,37条1項
刑訴法290条の2第1項,刑訴法290条の2第3項,憲法32条,憲法37条1項
判旨
刑事訴訟法290条の2第1項及び3項に基づく被害者特定事項の秘匿決定は、裁判自体を非公開とするものではないため、憲法37条1項の公開裁判を受ける権利を侵害しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法290条の2に基づき、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定を行うことが、憲法37条1項の定める「公開の法廷で対審を受ける権利」を侵害するか。
規範
憲法37条1項が保障する「公開の裁判を受ける権利」とは、裁判の対審及び判決を公開の法廷で行うことを意味する。刑事訴訟法に基づき、証拠書類の朗読等において被害者の氏名等の特定事項を明らかにしない措置を講じる決定は、裁判の手続自体を非公開とするものではないため、同条項に抵触しない。
重要事実
殺人および銃砲刀剣類所持等取締法違反の被告事件において、被害者ら(AないしE)に係る被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の申出がなされた。これに対し、第一審裁判所は刑訴法290条の2第1項および3項に基づき、秘匿決定を行った。弁護人は、この決定が憲法37条1項の公開裁判を受ける権利を侵害し、ひいては憲法32条の裁判を受ける権利を空洞化させるものであると主張して争った。
あてはめ
本件における秘匿決定は、証拠書類の朗読や証人尋問等において、被害者を特定させる情報の露出を制限する手続上の措置にすぎない。このような措置がとられた場合であっても、裁判の対審自体は公開の法廷で行われており、一般傍聴人が法廷に立ち入ることや審理を傍聴することが禁止されるわけではない。したがって、裁判を非公開で行うものとはいえず、公開裁判を保障した趣旨を没却するものではないと解される。
事件番号: 平成15(あ)2396 / 裁判年月日: 平成18年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、極めて重大な罪責を負うべき者に対して科される究極の刑罰であり、憲法13条、31条、36条に照らしても、公共の福祉の観点から合憲であると解される。 第1 事案の概要:被告人は、強盗殺人被告事件等の犯行に及び、その残虐な犯行態様や結果の重大性に鑑み、一審および二審において死刑の判決を受けた…
結論
被害者特定事項の秘匿決定は、憲法37条1項の公開裁判を受ける権利を侵害するものではなく、合憲である。
実務上の射程
被害者特定事項の秘匿制度(刑訴法290条の2)の合憲性を端的に示した判断であり、憲法上の「公開」の意義と、手続内での情報の秘匿措置を区別する際の根拠として機能する。被告人の防御権との兼ね合いが問題となる事案でも、公開原則違反の文脈では本決定が直接の射程となる。
事件番号: 昭和27(あ)5836 / 裁判年月日: 昭和29年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所が必要性を認めて尋問を許可した証人について規定したものであり、被告人側が申請した証人のすべてを取り調べなければならないという趣旨ではない。 第1 事案の概要:被告人側が証人の取調べを申請したが、裁判所がこれを全て採用しなかった事案(具体的な事案の詳細は判決文からは不明)…
事件番号: 平成23(あ)1917 / 裁判年月日: 平成24年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判員制度は、憲法76条1項(司法権の帰属)および80条1項(下級裁判所の裁判官の任命・任期)に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は殺人未遂および銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪で起訴された。一審(裁判員裁判)および二審において有罪判決を受け、上告。弁護人は、裁判員制度が憲法76条1項および80…
事件番号: 平成16(あ)455 / 裁判年月日: 平成19年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、身勝手な動機により2名の生命を奪った計画的かつ残虐な犯行については、被告人の更生の可能性等の諸事情を考慮しても死刑を維持した原判決は妥当である。 第1 事案の概要:中国人留学生である被告人が、一方的に好意を抱いていた同国人女性に交際を断られたことに絶望し、同女とその…
事件番号: 昭和23(れ)2030 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
殺人被告事件において、被告人が過失による傷害である旨の主張は、旧刑訴法第三六〇条第二項の主張にはあたらない。