死刑の量刑が維持された事例(中国人夫婦殺害事件)
判旨
死刑制度は憲法36条に違反せず、身勝手な動機により2名の生命を奪った計画的かつ残虐な犯行については、被告人の更生の可能性等の諸事情を考慮しても死刑を維持した原判決は妥当である。
問題の所在(論点)
2名の殺害を内容とする殺人被告事件において、死刑制度の憲法36条適合性、および被告人に前科がなく学生であった等の事情を考慮した上での死刑選択の妥当性が問われた。
規範
死刑の量刑判断においては、永山基準を前提としつつ、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の観点から極めてやむを得ない場合に認められる。
重要事実
中国人留学生である被告人が、一方的に好意を抱いていた同国人女性に交際を断られたことに絶望し、同女とその夫の殺害を決意した。被告人はサバイバルナイフ2本を準備して待ち伏せ、夫婦の胸部を多数回突き刺した上、頸部を切り裂いて両名を殺害した。被告人には前科はなく、学生生活を平穏に送っていたが、公判では自己の犯行に正面から向き合わず、被害者との交際関係について虚構の主張を交えるなど、真摯な反省は見られなかった。
あてはめ
まず、死刑制度の憲法36条違反は累次の判例により否定される。本件は、身勝手かつ独善的な動機に基づく計画的な犯行であり、殺害態様も執拗かつ残虐で、2名の生命を奪った結果は極めて重大である。被告人が犯行を認めていることや前科がないこと等の有利な事情を考慮しても、自己の犯行を正当化しようとする態度から真摯な反省は認め難い。したがって、これらの事情を総合すると、極刑の選択を是認した原判断は重きに失するものとはいえない。
事件番号: 平成15(あ)2619 / 裁判年月日: 平成19年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法31条、36条に違反せず、動機に酌量の余地がない無差別殺傷事件において、2名の殺害という結果の重大性や社会的影響に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、日本社会への強い不満から無差別に人間を殺害しようと決意し、包丁と玄能を準備。白昼の繁華…
結論
被告人を死刑に処した第1審判決を維持した原判決は相当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑の量刑判断における総合評価のあり方を示す事例判決。特に、殺害人数が2名である場合に、動機の理不尽さや殺害態様の残虐性、反省の程度の低さが、前科のない若年者という有利な事情を凌駕して死刑を正当化する判断枠組みとして参考になる。
事件番号: 平成15(あ)2396 / 裁判年月日: 平成18年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、極めて重大な罪責を負うべき者に対して科される究極の刑罰であり、憲法13条、31条、36条に照らしても、公共の福祉の観点から合憲であると解される。 第1 事案の概要:被告人は、強盗殺人被告事件等の犯行に及び、その残虐な犯行態様や結果の重大性に鑑み、一審および二審において死刑の判決を受けた…
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…
事件番号: 平成15(あ)1087 / 裁判年月日: 平成18年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、身勝手な動機に基づく2件の残虐な殺人・強盗殺人について死刑を選択した原判決は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は内縁の妻が他男性と結婚したことに憤慨し、殺害予告後に彼女を鋭利な刃物で頸部を突き刺し殺害した。さらに約20日後、逃亡資金を得るためタク…
事件番号: 平成21(あ)1640 / 裁判年月日: 平成25年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が検討される事案において、組織的背景に基づく犯行の性質、殺意の強固さ、結果の重大性、地域社会への影響、及び被告人の役割を総合的に考慮すれば、たとえ遺族の一部に宥恕の意思があり、被告人が暴力団を脱退したなどの情状を考慮しても、死刑に処した判断は是認される。 第1 事案の概要:暴力団員である…