死刑の量刑が維持された事例(豊中市の男女殺人等事件)
判旨
死刑制度は、極めて重大な罪責を負うべき者に対して科される究極の刑罰であり、憲法13条、31条、36条に照らしても、公共の福祉の観点から合憲であると解される。
問題の所在(論点)
死刑制度そのものが憲法13条、31条、36条に違反し、違憲といえるか。特に死刑が憲法36条にいう「残虐な刑罰」に該当するかが争点となる。
規範
死刑は、現行憲法の下においても、公共の福祉の観点から、その犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、および被害者の感情等の諸般の事情を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、やむを得ない場合にのみ許容される極刑である。憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴うなど人道上の見地から容認できない刑罰を指すが、生命を奪う死刑そのものが直ちにこれに該当するとは解されない。
重要事実
被告人は、強盗殺人被告事件等の犯行に及び、その残虐な犯行態様や結果の重大性に鑑み、一審および二審において死刑の判決を受けた。被告人は、死刑制度そのものが憲法13条(生命に対する権利)、31条(適正手続)、36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)に違反するとして上告した。
あてはめ
死刑は生命を絶つ刑罰であり、人道上の観点から「残虐」な側面を内包するものの、法が定める適正な手続(憲法31条)に基づき、かつ犯罪の重大性に見合った究極の責任を問う手段として存置されている。現在の国民感情や法的法規範に照らせば、死刑が直ちに人道上容認できないほど不必要な苦痛を強いる「残虐な刑罰」にあたるとは断じ得ない。本件の犯行は質的にも量的にも極めて重大であり、矯正の可能性が認められない以上、死刑の選択はやむを得ないものと認められる。
結論
事件番号: 平成16(あ)455 / 裁判年月日: 平成19年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、身勝手な動機により2名の生命を奪った計画的かつ残虐な犯行については、被告人の更生の可能性等の諸事情を考慮しても死刑を維持した原判決は妥当である。 第1 事案の概要:中国人留学生である被告人が、一方的に好意を抱いていた同国人女性に交際を断られたことに絶望し、同女とその…
死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず合憲である。被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
死刑制度の合憲性に関するリーディングケースである。答案上では、憲法36条の「残虐な刑罰」の定義(不必要な苦痛の有無等)や、生命権(13条)の制約が公共の福祉により正当化される根拠として引用する。具体的事件の量刑判断ではなく、制度自体の合憲性が問われた際の一般的規範として用いるべきである。
事件番号: 平成18(あ)2339 / 裁判年月日: 平成20年3月5日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法290条の2第1項及び3項に基づく被害者特定事項の秘匿決定は、裁判自体を非公開とするものではないため、憲法37条1項の公開裁判を受ける権利を侵害しない。 第1 事案の概要:殺人および銃砲刀剣類所持等取締法違反の被告事件において、被害者ら(AないしE)に係る被害者特定事項を公開の法廷で明ら…
事件番号: 平成15(あ)1087 / 裁判年月日: 平成18年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、身勝手な動機に基づく2件の残虐な殺人・強盗殺人について死刑を選択した原判決は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は内縁の妻が他男性と結婚したことに憤慨し、殺害予告後に彼女を鋭利な刃物で頸部を突き刺し殺害した。さらに約20日後、逃亡資金を得るためタク…
事件番号: 平成16(あ)1687 / 裁判年月日: 平成19年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。また、複数の被害者を殺傷した強盗致死等の事案において、殺意の有無、動機、犯行態様の残虐性、結果の重大性を総合考慮し、死刑の選択を是認した。 第1 事案の概要:暴力団関係の紛議等を契機として、被告人は共犯者と共謀し、(1)男性1名を河川に投げ込んで溺…
事件番号: 昭和58(あ)1 / 裁判年月日: 平成元年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、また検察官による公訴の提起が差別的意図に基づかず訴追裁量を逸脱しない限り、憲法14条、31条に違反することはない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者らと共謀し、3名の殺害(C、F、Jに対する殺人)、現住建造物等放火未遂、及び約束手形5通の恐喝を行っ…