判旨
憲法37条2項前段は、裁判所が必要性を認めて尋問を許可した証人について規定したものであり、被告人側が申請した証人のすべてを取り調べなければならないという趣旨ではない。
問題の所在(論点)
被告人が申請した証人を裁判所が採用しないことは、憲法37条2項前段が保障する「すべての証人に対して審問する機会」を奪うものであり、同条に違反するか。
規範
憲法37条2項前段(証人喚問権)は、裁判所がその必要を認めて尋問を許可した証人について規定したものである。したがって、被告人側の申請に係る証人のすべてを取り調べなければならないという趣旨までを含むものではない。
重要事実
被告人側が証人の取調べを申請したが、裁判所がこれを全て採用しなかった事案(具体的な事案の詳細は判決文からは不明)。弁護人は、被告人側が申請した証人を取り調べなかったことが、憲法37条2項前段に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
最高裁の判例(昭和23年6月23日大法廷判決)の趣旨に照らせば、憲法37条2項前段は、裁判所が必要と認めた証人について適正な尋問機会を保障するにとどまる。本件においても、裁判所が申請された証人のすべてを取り調べる義務を負うわけではない。したがって、被告人側の申請した証人を取り調べなかったとしても、直ちに憲法違反とはならない。
結論
被告人側が申請した証人のすべてを取り調べる必要はなく、原判決に憲法37条2項違反の違法はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の証拠調べの必要性の判断において、裁判所に広範な裁量を認める根拠となる。答案上は、証拠調べ請求の却下の合憲性を論じる際、憲法37条2項が「絶対的にすべての証人」を対象とするものではないことを示すために引用する。
事件番号: 昭和40(あ)2229 / 裁判年月日: 昭和41年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人が申請した証人を裁判所が健全な裁量により不要と認めた場合にまで、その取調べを義務付けるものではない。 第1 事案の概要:被告人Bは、第一審または控訴審において証人尋問を請求したが、原審(控訴審)は当該証人申請を却下した。これに対し被告人側は、証人尋問を行わなかったことが憲法…
事件番号: 昭和27(あ)6500 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、被告人側が申請した証人のすべてを必ずしも取り調べる義務を負うものではない。本件では、被告人が主張する証人尋問の不実施は憲法違反には当たらず、上告は棄却された。 第1 事案の概要:被告人は第一審または控訴審において証人の取調べを申請したが、裁判所がそのすべてを採用しなかった。これに対し、被…
事件番号: 昭和26(あ)1999 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所に対し、被告人側から申請された証人をすべて尋問する義務を課したものではなく、必要性がないと判断される証人の尋問を却下しても同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲等所持禁止令違反等の罪に問われた事案において、特定の証人尋問を申請したが、裁判所によって採用され…
事件番号: 昭和38(あ)2078 / 裁判年月日: 昭和39年8月28日 / 結論: 棄却
所論は、原判決は、令状なくして違憲違法の押収手続により押収された物件を証拠として、その支持する第一審判決判示事実を有罪と認定しているから、原判決は憲法第三五条に違反する旨主張するが、かかる論旨は、原審で主張も判断もなかつた訴訟手続に関する主張であるから適法な上告理由に当らない(昭和三五年(あ)第一七二一号、同三六年七月…
事件番号: 昭和25(れ)1218 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項の「公平な裁判所」とは組織や構成が中立的な裁判所を指し、同条2項は裁判所の証拠採否に関する裁量を妨げるものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において証拠調べの範囲や限度につき不当であると主張し、憲法37条1項および2項に違反するとして上告した事案。原審において特定の証拠調…