所論は、原判決は、令状なくして違憲違法の押収手続により押収された物件を証拠として、その支持する第一審判決判示事実を有罪と認定しているから、原判決は憲法第三五条に違反する旨主張するが、かかる論旨は、原審で主張も判断もなかつた訴訟手続に関する主張であるから適法な上告理由に当らない(昭和三五年(あ)第一七二一号、同三六年七月一九日大法廷決定、刑集一五巻七号一一九四頁参照)。
控訴審において主張判断のない訴訟手続に関する主張であるとして適法な上告理由にあたらないとされた事例。
刑訴法405条,刑訴法218条,刑訴法219条,憲法35条
判旨
憲法37条2項は、裁判所に対し、被告人側が申請した証人を、不必要と思われる者まで含めて悉く尋問しなければならないという義務を課すものではない。
問題の所在(論点)
裁判所が被告人側の申請した証人尋問を必要性がないとして却下することは、憲法37条2項(証人喚問権)に違反するか。
規範
憲法37条2項は、被告人に証人の喚問権を保障するが、裁判所に対して被告人又は弁護人から申請した証人を、不必要と思われる者まで悉く訊問しなければならないという趣旨までを含むものではない。
重要事実
被告人は、原審において証拠の申請(証人尋問等)を行ったが、裁判所はその一部を不必要として採用しなかった。これに対し、被告人側は、令状に基づかない違法な押収手続によって得られた物件を証拠とした点や、申請した証人の尋問を却下した点は憲法35条および37条2項に違反するとして上告した。
事件番号: 昭和27(あ)5836 / 裁判年月日: 昭和29年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所が必要性を認めて尋問を許可した証人について規定したものであり、被告人側が申請した証人のすべてを取り調べなければならないという趣旨ではない。 第1 事案の概要:被告人側が証人の取調べを申請したが、裁判所がこれを全て採用しなかった事案(具体的な事案の詳細は判決文からは不明)…
あてはめ
本件において、被告人側は特定の証人尋問を求めたものの、裁判所はこれを不必要と判断して却下した。憲法37条2項は、公平な裁判の実現のために証人尋問の機会を保障するが、訴訟経済や立証の必要性の観点から裁判所がその採否を決する裁量を否定するものではない。したがって、裁判所が不必要と判断した証人を尋問しなかったとしても、同条に違反するものではない。
結論
裁判所が不必要な証人を尋問しなかったとしても憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
憲法37条2項の「証人喚問権」の限界を示す基本的判例である。答案上では、証拠採用の自由(刑訴法298条等)の憲法適合性を論じる際の根拠として機能する。裁判所は全ての証拠申請を受け入れる義務はなく、立証の必要性を考慮して採否を決定できるという「必要性による制限」を肯定する文脈で使用する。
事件番号: 昭和26(あ)1999 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所に対し、被告人側から申請された証人をすべて尋問する義務を課したものではなく、必要性がないと判断される証人の尋問を却下しても同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲等所持禁止令違反等の罪に問われた事案において、特定の証人尋問を申請したが、裁判所によって採用され…
事件番号: 昭和40(あ)2229 / 裁判年月日: 昭和41年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人が申請した証人を裁判所が健全な裁量により不要と認めた場合にまで、その取調べを義務付けるものではない。 第1 事案の概要:被告人Bは、第一審または控訴審において証人尋問を請求したが、原審(控訴審)は当該証人申請を却下した。これに対し被告人側は、証人尋問を行わなかったことが憲法…
事件番号: 昭和24(れ)185 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 棄却
憲法第三七條第二項は裁判所が必要と認めて喚問した證人に對する規定であつて、裁判所が必要と認めない證人をも徒らに喚問し、被告人等に審問の機會を與うべしとの規定でないことは當裁判所屡次の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八八號同年六月二五日大法廷判決、昭和二二年(れ)第二五三號昭和二三年七月一四日大法廷判決、昭和…