憲法第三七條第二項は裁判所が必要と認めて喚問した證人に對する規定であつて、裁判所が必要と認めない證人をも徒らに喚問し、被告人等に審問の機會を與うべしとの規定でないことは當裁判所屡次の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八八號同年六月二五日大法廷判決、昭和二二年(れ)第二五三號昭和二三年七月一四日大法廷判決、昭和二二年(れ)第二三〇號昭和二三年七月二九日大法廷判決各參照)
憲法第三七條第二項の法意
憲法37條2項
判旨
憲法37条2項は、裁判所が必要と認めて喚問した証人に対する審問の機会を保障するものであり、裁判所が必要ないと判断した証人を喚問することを義務付けるものではない。
問題の所在(論点)
裁判所が証拠調べの必要性がないと判断して証人喚問の申請を却下することは、憲法37条2項が保障する「すべての証人を審問する機会」を侵害し、違憲となるか。
規範
憲法37条2項の証人審問権の保障は、裁判所が証拠調べの必要性を認めて喚問した証人に対して及ぶものであり、裁判所が必要でないと認めた証人についてまで喚問し被告人に審問の機会を与えることを要求するものではない。
重要事実
被告人3名は、被害者Aの証人喚問を申請したが、原審は当該証人の喚問の必要性がないと判断して申請を却下した。これに対し被告人側は、証人喚問を認めず審問の機会を与えなかったことは、憲法37条2項に反し違憲であるとして上告した。
あてはめ
原審が被害者Aの証人喚問を必要なしとして申請を却下した処置は、裁判所の合理的な裁量に基づく証拠調べの必要性の判断であると解される。憲法37条2項は裁判所が必要と認めた証人についてのみ審問権を保障しているため、必要性がないとされた本件証人を喚問しなかったことに何ら違憲の余地はない。
結論
憲法37条2項に違反しない。裁判所が証拠調べを不要と判断した証人の喚問申請を却下することは適法である。
実務上の射程
裁判所による証拠決定の裁量を肯定する判例であり、刑事訴訟法295条等に基づく証拠申請却下の憲法適合性を裏付ける。答案上は、被告人の証人審問権も無制限ではなく、裁判所の証拠の必要性判断を前提とする限定的なものであることを示す際に引用する。
事件番号: 昭和30(あ)2354 / 裁判年月日: 昭和32年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、裁判所が証拠調べの必要性を認めた証人についてのみ喚問を要求するものであり、裁判所が合理的な裁量の範囲内で証人の取捨選択を行うことは同条に違反しない。 第1 事案の概要:刑事被告人の弁護人が、原審において計9名の証人尋問を申請したが、裁判所はその申請をすべて却下し、一人も審問する機…
事件番号: 昭和28(あ)536 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
所論は、第一審裁判所が被告人に対し、黙秘権を告げる前に、学校はどこまで行つたか等と尋問したこと、並びに証拠調に際し弁護人申請にかゝる証人からその取り調べを開始したことを捉え予断をもつて審理に当つたものであるから右は憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とはいえないというのであるが、一審裁判所の右措置が何等違法でない…
事件番号: 昭和23(れ)833 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
しかし、憲法第三七條第二項に、刑事被告人はすべての證人に對し審問の機會を充分に與えられると規定しているのは、裁判所の職權により又は訴訟當事者の請求により喚問した證人につき、反對訊問の機會を充分に與えなければならないと言うのであつて、被告人に反對訊問の機會を與えない證人其他の者(被告人を除く)の供述を録取した書類は絶對に…
事件番号: 昭和29(あ)2711 / 裁判年月日: 昭和29年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が合理的な裁量により被告人側の証人申請を却下することは、憲法37条2項に反しない。また、弁論再開の請求を却下することが合理的裁量の範囲内であれば、適法である。 第1 事案の概要:被告人側は、原審において証人取調べのための弁論再開を請求したが、裁判所はこの請求を却下した。これに対し被告人側は、…