家庭裁判所から検察官への送致決定を経ることなくされた起訴に基づき発付された略式命令に対する非常上告
刑訴法338条4号,刑訴法458条1号,刑訴法463条1項,少年法20条1項
判旨
少年の刑事事件において、家庭裁判所から検察官への送致決定(逆送)を経ていない事実について公訴が提起された場合、その公訴提起の手続は法律の規定に違反して無効であり、裁判所は判決で公訴を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
家庭裁判所による送致決定(少年法20条1項)を経ていない少年の被疑事実について公訴が提起された場合、裁判所はどのような判断を下すべきか。
規範
少年法20条1項により、少年に対する刑事事件について公訴を提起するためには、原則として家庭裁判所から検察官への送致決定を経ることを要する。この決定を経ずに提起された公訴は、「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」(刑事訴訟法338条4号)に該当する。
重要事実
被告人(昭和63年生まれの少年)は、平成19年6月2日、(1)無免許で普通自動二輪車を運転し、(2)最高速度を50km/h超える速度で運転した。検察官はこれら2つの事実につき略式命令を請求したが、家庭裁判所の送致決定は(2)の事実についてのみなされており、(1)の事実については送致決定がされていなかった。簡易裁判所は両事実を認定して罰金23万円の略式命令を発し、同命令は確定した。
あてはめ
本件における事実(1)(無免許運転)は、少年法20条1項に基づく家庭裁判所から検察官への送致決定がなされていない。少年事件においてこの送致決定は刑事訴追の前提条件である。したがって、事実(1)に関する公訴提起は、適正な手続を欠いたものであり、刑事訴訟法338条4号にいう公訴提起の手続が規定に違反して無効である場合に該当すると評価される。一方で、送致決定のある事実(2)については有効な公訴提起として有罪判決が可能である。
事件番号: 平成13(さ)2 / 裁判年月日: 平成14年4月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】少年法上の送致手続を経ずに少年に対し提起された公訴は、その提起の手続が規定に違反するため、刑事訴訟法338条4号により判決で棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は平成13年5月20日に道路交通法違反(速度超過)の罪を犯した。検察官は同年6月13日、被告人を徳山簡易裁判所に略式起訴し、同裁判…
結論
家庭裁判所の送致決定を欠く事実(1)については、刑事訴訟法338条4号に基づき判決で公訴を棄却すべきであり、これを行わず有罪とした原略式命令は法令違反として破棄を免れない。
実務上の射程
少年法上の送致決定が訴訟条件であることを明示した事例である。答案上は、少年事件の刑事手続において「送致決定の有無」や「送致対象事実と起訴事実の同一性」が問題となる場面で、訴訟条件を欠く効果(338条4号による公訴棄却)を説明する根拠として活用できる。
事件番号: 平成20(さ)3 / 裁判年月日: 平成21年3月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法の改正により無免許運転から免許条件違反へと法定刑が変更された行為について、反則金納付等の通告手続を経ずに公訴を提起することは、刑事訴訟法338条4号の公訴提起の手続が規定に違反したときに該当する。 第1 事案の概要:被告人は、運転できる普通自動車が自動三輪車及び軽自動車(360cc以下)…
事件番号: 昭和42(さ)4 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: その他
罰金のみにあたる罪を犯した少年の事件について、家庭裁判所を経由することなく公訴が提起され、これを有罪とした略式命令が確定した場合において、これに対する非常上告の申立があつたときは、右略式命令を破棄して公訴棄却の言渡をすべきである。
事件番号: 平成25(さ)4 / 裁判年月日: 平成26年1月20日 / 結論: 破棄自判
少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件について,それと事実の同一性が認められるとしても,罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することは許されない。
事件番号: 平成14(さ)2 / 裁判年月日: 平成14年11月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】罰金以下の刑に当たる罪については、少年法20条1項により家庭裁判所から検察官へ送致することができない。これに反して公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人(当時少年)は、法令の定める乗車定員を超えて原動機付自転車を運転した道路交…