死刑の量刑が維持された事例(横浜一家3人殺害事件)
判旨
被告人が警察官から連行されそうになった際、これを免れるため、所持していたアタツクナイフ(刃体の長さ約12.2センチメートル)を振り回し、警察官らに突き付けて抵抗した行為は、刑法95条1項の公務執行妨害罪における「脅迫」に該当する。
問題の所在(論点)
警察官の連行を免れるために、刃体の長さが約12.2センチメートルあるアタツクナイフを振り回し、警察官の胸元に突き付ける行為が、公務執行妨害罪の構成要件である「脅迫」に該当するか。
規範
公務執行妨害罪(刑法95条1項)にいう「脅迫」とは、公務員に対し、その職務の執行を妨げる目的をもって、害悪を告知することをいう。その程度は、公務員に恐怖心を生じさせるに足りるものであることを要するが、現実に恐怖心を抱いたことまでは必要とされない。また、その態様は直接的・積極的なものであることを要する。
重要事実
被告人は、警察官らから無理矢理連行されそうになった際、自らの身辺を護るため、所持していたアタツクナイフ(刃体の長さ約12.2センチメートル)を鞘から抜き放った。そして、これを無差別に振り回し、さらには当該ナイフを警察官らの胸元に突き付けて激しく抵抗した。
あてはめ
被告人が使用したアタツクナイフは、刃体の長さが約12.2センチメートルに及ぶ殺傷能力の高い凶器である。このような凶器を無差別に振り回し、かつ至近距離である「胸元」に突き付ける行為は、客観的に見て公務員の生命・身体に対し重大な危害を加える旨を告知するものといえる。たとえ被告人が警察官の不当な連行から逃れたいという動機に基づいていたとしても、その手段としての行為は極めて危険であり、公務員の職務執行を断念させるに足りる強い害悪の告知(脅迫)があったと評価せざるを得ない。したがって、本件行為は同罪の「脅迫」に該当する。
事件番号: 平成19(あ)1317 / 裁判年月日: 平成20年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が適当であるとされるためには、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも…
結論
被告人の行為は公務執行妨害罪における「脅迫」に該当し、同罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、公務執行妨害罪の実行行為としての「脅迫」について、凶器(ナイフ)を用いた具体的態様からその充足性を肯定したものである。警察官による有形力の行使に対する反撃であっても、その手段が過度であれば「正当な職務執行」を前提とした本罪の成立を妨げないことを示唆している。
事件番号: 昭和57(あ)1914 / 裁判年月日: 昭和58年3月25日 / 結論: 棄却
自己が約二週間前まで同棲していた女性のマンション内において、その台所から持ち出した包丁を同女と関係を持つた男性の前頸部に突きつけるなどして同人に慰藉料の支払方を承認する文書を作成させたり、同女の頭部を右包丁の峰で殴打したりし、その間ある程度の時間継続してこれを手に把持していた本件行為は、たとえその場所が自己と長年同棲し…
事件番号: 平成15(あ)163 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 棄却
反目状態にあった男とのけんか抗争等に備える目的で自車のダッシュボード内に入れておいた刃物を車外に持ち出した後に路上で携帯する行為は,同人運転の自動車に意図的に衝突されて自車が転覆し,車外にはい出す際に護身用にズボンのポケットに上記刃物を移し替えたという事情があることを考慮しても,その違法性が阻却される余地はない。
事件番号: 平成19(あ)946 / 裁判年月日: 平成22年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の罪を犯した被告人に対し、殺害が計画的でないことや自白・謝罪等の事情を考慮しても、犯行の経緯、動機、態様の残虐性、結果の重大性に鑑みれば、極めて重大な刑事責任を免れず、死刑の科刑は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済や逃亡中の生活費に窮し、短期間のうちに2件の強盗殺人および強…
事件番号: 昭和29(あ)1895 / 裁判年月日: 昭和31年12月28日 / 結論: 棄却
刃渡一五糎未満の七首を所持することは許されている場合、それを居宅内で所持する者が、その居宅内でこれを擬して他人を脅迫したからといつて、銃砲刀剣類等所持取締令第一五条(昭和三〇年法律第五一号による改正前の規定)にいう七首の携帯の所為にあたらないものと解するのが相当である。