刃渡一五糎未満の七首を所持することは許されている場合、それを居宅内で所持する者が、その居宅内でこれを擬して他人を脅迫したからといつて、銃砲刀剣類等所持取締令第一五条(昭和三〇年法律第五一号による改正前の規定)にいう七首の携帯の所為にあたらないものと解するのが相当である。
銃砲刀剣類等所持取締令第一五条(昭和三〇年法律五一号による改正前の規定)にいう七首の携帯にあたらない一事例
銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前のもの)2条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前のもの)15条
判旨
銃砲刀剣類等所持取締令(当時)における「携帯」とは、自宅内での把持を含まない。自宅内で匕首を手に取る行為は、法が許容する「所持」の一態様にすぎず、禁止される「携帯」には当たらない。
問題の所在(論点)
自宅内で刃物を手に取る行為が、銃砲刀剣類等所持取締令(現:銃刀法)上の禁止行為である「携帯」に該当するか。特に「所持」と「携帯」の区別が問題となる。
規範
「所持」と「携帯」を区別し、前者の一部を許容し後者を禁止している法の趣旨に照らせば、自宅内で所持を許されている刃物を、犯行の用に供するために手にする行為(把持)は、依然として「所持」に包含される行為の一態様にすぎず、禁止される「携帯」には当たらない。
重要事実
被告人は、自らの居宅において、業務その他正当な理由がないにもかかわらず、刃渡り12センチメートルの匕首(あいくち)を手にし、被害者に対して「突き殺してやる」などと言い向けて脅迫した。原審は、被告人が居宅内で匕首を手に取ったことをもって、当時の銃砲刀剣類等所持取締令15条が禁止する「携帯」に該当すると判断した。
事件番号: 昭和30(あ)2488 / 裁判年月日: 昭和31年2月9日 / 結論: 棄却
鉄砲刀剣類等所持取締令第二条違反の罪は刃渡一五センチメートル以上の刀を同条所定の除外事由なくして所持することによつて成立するのであり、犯人が主観的に如何なる使用目的を有していたかはその成立を左右するものではない。
あてはめ
本件匕首は刃渡り12センチメートルであり、当時の規定では15センチメートル未満であるため「所持」自体は禁止されていなかった。被告人は自らの居宅において本件匕首を手に取っているが、これは居宅内での「所持」が許されている範囲内での行為である。犯行の目的で手にしたとしても、それは所持の態様の一つにすぎず、自宅外へ持ち出すなどの「携帯」概念には当たらないと解すべきである。したがって、居宅内での把持を「携帯」とした原判決には法令解釈の誤りがある。
結論
居宅内で匕首を手にする行為は「携帯」に当たらない。したがって、当該公訴事実については無罪である。
実務上の射程
現代の銃刀法下においても、「所持(保管等を含む広義)」と「携帯(直ちに実力をもって支配し得る状態で持ち歩くこと)」の区別において重要である。特に、自宅内での行為が「携帯」や「持出し」に該当するか否かの限界を画する際の基礎的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和57(あ)1914 / 裁判年月日: 昭和58年3月25日 / 結論: 棄却
自己が約二週間前まで同棲していた女性のマンション内において、その台所から持ち出した包丁を同女と関係を持つた男性の前頸部に突きつけるなどして同人に慰藉料の支払方を承認する文書を作成させたり、同女の頭部を右包丁の峰で殴打したりし、その間ある程度の時間継続してこれを手に把持していた本件行為は、たとえその場所が自己と長年同棲し…
事件番号: 昭和32(あ)2599 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 破棄差戻
指揮刀であつても、「刀」としての実質(鋼質性材料をもつて製作された刃物又は或る程度の加工により刃物となりうるものであること)をそなえないものは、銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「刀剣類」にあたらない。
事件番号: 昭和28(あ)2526 / 裁判年月日: 昭和28年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の組織および構成が偏頗でないことを指し、個々の裁判の内容が当事者から見て不公平に感じられることを含むものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原審における量刑が重すぎるなどの不満を理由として、かかる裁判の内容は憲法37条1項の保障する「公平な裁…
事件番号: 昭和28(あ)708 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類所持等取締法(本判決当時は旧銃砲火薬類取締法等)における「所持」とは、物を自己の支配し得べき状態に置くことをいい、他人から預かって持ち運ぶ行為もこれに含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、拳銃1挺および拳銃実包4発を他人から預かり、これを持ち運んだ。弁護人は、このような一時的な預かりや…